THE DAY Waltz 1 / 前田栄

本の感想, 作者名 ま行前田栄

両親から引き離され、後継者争いの”エサ”として豪華な屋敷で幽閉生活を送っているパウロは、ある日、埃まみれの本を見つける。その本の中から現れたのはミニサイズの≪幽霊もどき≫のフィラレテス。フィラレテスは400年前の錬金術師で、悪魔の書に囚われてしまったという。悪魔の書のマスターに選ばれてしまったパウロは、フィラレテスを本から解放するために400年前の”その日”のプラハで悪魔の書奪還のミッションを実行することになる。


ウィングス文庫の前田さんの新シリーズ。前田さんの本は他シリーズ「死が二人を分かつまで」(→感想:続きに期待中)を読んでいて、他のシリーズも読んでみたいなぁと思っていたところで新しいのが出てきましたので、チャレンジです。

あらすじから想像していた物語とは大分違って、正直な話びっくりです。もっと悲壮感漂ったシリアスストーリーかと思えば、フィラレテスのあの性格のお陰で……。長い間本に囚われ、何人もの本のマスターとともに”その日”を繰り返してきたフィラレテス。何か悟りきっている所があっておちゃらけてしまってはいるものの、根っこの部分はシリアスなんです。しかし、いろいろあってジャパニメーションマニアというところで全ておじゃんです。(正確だけどある意味)間違った日本知識をパウロ(外見はほぼ日本人な日系人)に伝えるフィラレテスが楽しかったです。思わず感心してしまう場面も多々でした。

悪魔の書が焼き払われてしまった日を繰り返し、1ページずつ取り返していく、但し命がけなので失敗してしまったらもう元には戻れないという緊迫した状況を、その”賢さ”で乗り切るパウロのお手並みは見事です。ダテにいろいろあってひねにひねている大人びた少年ではありません。しかし、そんなパウロがフィラレテスと関わっていく中で時々見せる少年っぽさが良いですね。
本編の方は謎のホムンクロスの少女の動向次第でしょうかね。なんやかんやで反則だからなぁ、彼女。おまけの番外編では凄腕エージェントなパウロ大好きメイドに笑いました。”その日”以外のパウロの日常も、実はそんなに棄てたもんじゃないかもしれないなぁと思った次第です。

imgTHE DAY Waltz 1
前田栄/水色スイス(イラスト)
ISBN:978-4-403-54118-6
新書館ウィングス文庫(2007/07)
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