クジラの彼 / 有川浩

本の感想, 作者名 あ行有川浩

合コンで出会った潜水艦乗りとの恋、トイレ事情から芽生える恋、腐れ縁から芽生える恋、ずるずると言い出せずにいる結婚話、規則を破り彼女に会いに行く純情は報われるのか、初デートでの出来事は……、と自衛隊を部隊に描かれた全6編の短編小説。


一話一身悶え(もしくはそれ以上)の非常に胸キュンな恋愛が詰まった短編集でした。終始ニヤケながら読んでたと思います。家でしか読めません、こういうの。メチャクチャ好きだなぁ。胸キュン具合がすごくて、読むのに心の体力を要するような気がします。
ただの恋愛小説というのは非常に苦手なんですが、自衛隊を舞台にしているというところと、地に足の着き具合がちょうど良い感じで、私のツボにドンぴしゃでした。私には珍しく、今現在で各話2回~4回読み直してます。短編なので再読しやすいというのもありますが、読み終わってすぐここまで読み返すのも久しぶりだなぁ。

どのお話も面白くて好きなのですが、まず1つあげるとすれば”海の底”のあの二人のその後を描いた「有能な彼女」かな。夏木さんがここまで弱気になるとは思っても見なかったですよ。予想通り望ちゃんに尻にしかれていてちょっと面白かったです。これは海の底から続けて読むと破壊力抜群ですね。
そして、表題作「クジラの彼」は夏木さんの相棒冬原さんの合コンからの出会いを描いた話。こちらはこちらでよいものでした。あの物語のバック(?)でこんな事が繰り広げられていたとは、さすが冬原さんですね。
そして「ファイターパイロットの君」では”空の中”のあの気になる二人の初デートのお話とかお子様のお話とか。やっぱり光稀さん、いいなぁ。かわいいなぁ。

全くの新作群の中では「ロールアウト」が一番のお気に入りです。トイレ事情からここまで話がふくらむとは。トイレと恋愛、結び付きそうもなさそうなものがこうも見事にリンクするとは脱帽です。最後の最後の二人のやり取りがツボにはまりました。
脱柵エレジー」は他作品とは若干雰囲気が変わっているかも、と感じましたが最後の最後の一言でやられました。ただの切ない自虐ネタで終わったらどうしようと違う意味でハラハラしてしまいましたが、押さえるべき所はきちんと押さえられております。
国防レンアイ」ではたくましい女性自衛官と待ち続ける同期の男性自衛官の物語。待ち続けた男のタンカを切ったセリフがかっこよかったです。

胸キュンなラブストーリーを読んでみたいのならはずせない作品だったと思います。胸キュン本としては大変お勧め。既刊作品の後日談も3作含まれているため、既刊を読んだ方がより楽しめると思いますがこれだけでも十分楽しめるかなぁ。

imgクジラの彼
有川浩
角川書店(2007.01)
ISBN:978-4-04-873743-2
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