ヴィクトリアン・ローズ・テイラー 恋のドレスと秘密の鏡 / 青木祐子

本の感想, 作者名 あ行青木祐子

モアティエ公爵はアップルを養子として迎え、彼女をお披露目するための園遊会の準備を進めていた。モアティエ家の長女コーネリアは、アップルが愛人の子であることを隠し何事もないかのように振る舞う母親に同情ともいらだちともいえない微妙な感情を抱えながら、『薔薇色』に園遊会用のドレスの作成を依頼する。


「ヴィクトリアン・ローズ・テーラー」、ついに闇のドレス制作者と目されるリンダ・パレス登場か、編。読み切りの体裁をとりつつもゲスト登場人物等は前回からの持ち越しでした。

ゲストキャラはアディルの友人・コーネリア嬢。かなり先進的なお嬢様で何となくかっこよくて結構好きかもしれません。彼女もモアティエ家の歪みの被害者だと思うとなかなかに切ない気分になります。
シャーロットとクリスの恋模様は一歩進んで0.5歩下がる感が如実に現れていてやきもきします。いや、もう、二人ともお互いに対する思いだけならそこら辺の幸せカップルなんか目じゃないほど熱々なんですけどね。身分の差というのは絶対的なものなのだなぁと現実の厳しさをたたきつけられます。

恋のドレスと闇のドレスの表裏一体性や『夜想』のお針子の登場などかなり物語の核心に近づいたお話で読んでいる途中でこの先どうなるんだろう、ページをめくらずに入られない展開でした。しかし、ページをめくりたいと思う一方で読むのがつらいと感じる面もありました。人を恋する気持ちと同じくらい人の心の闇というものにスポットライトがあたるので、コーネリアやその母関係はつらかったなぁ。決して後味の悪い結末ではないのだけど、そこに至るまでが何とも。『薔薇色』や『夜想』のドレスのすごさを改めて思い知った次第です。

恋のドレスと大いなる賭け

img恋のドレスと秘密の鏡 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー
青木祐子/あき(イラスト)
集英社コバルト文庫(2008.01)
ISBN:978-4-08-601112-9
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