“文学少女”と死にたがりの道化 / 野村美月

本の感想, 作者名 な行野村美月

物語を食べちゃうくらい深く愛している文学少女の部長・天野遠子と平凡を愛する男子高生・井上心葉の部員数わずか二名の文学部にやってきたのは、恋をかなえてほしいという一年生の女の子。心葉は彼女のためにラブレターを代筆するだけのはずだったが、次第に過去のある事件に巻き込まれていく。


本・作文そのその他を食べてしまう文学少女の天野先輩と、その下僕と化している過去にとある傷を負った心葉くんのほろ苦い学園サスペンス(?)。

太宰治の人間失格を題材に、少しやりきれないほろ苦い現在と過去の事件を解き明かす物語でした。人間失格は昔読んだときに陰々滅々の風がこりゃあわん、と思って一読しただけなのですが、文学少女視点から見るとまた違った物語に見えてきそうです。物語自体は逆転につぐ逆転の展開の連続で、真相はどうなんだろうと一気に読み進めておりました。

で、噂に聞いていた天野先輩がすごくかわいらしくて思わずノックダウンされそうになりました。いいなぁ、天野先輩。この話を読んだ限りは美食家というよりむしろ悪食のような気もしますが……。
天野先輩がどうして物語を食べてしまうのかについてはまだまだ謎ばかりですので、続きが楽しみです。

img“文学少女”と死にたがりの道化
野村美月/竹岡美保
ファミ通文庫(2006.05)
ISBN:4-7577-2806-9
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