帝冠の恋 / 須賀しのぶ

本の感想, 作者名 さ行須賀しのぶ

美しく聡明なバイエルン王女ゾフィーはオーストリア大公カールの元に嫁ぐが、夫の凡庸さと帝国の古い体質に落胆する。しかし、婚礼の日に出会った義理の甥フランツはそんな憂鬱な宮廷での生活でのゾフィーの唯一の癒しの存在となる。次第に惹かれ合う二人であったが、ゾフィーは大公妃という立場からその気持ちを押し殺して……


ミュージカルのエリザベートではこの人もうほぼラスボス、というくらいのおっかなさをばしばしと醸し出されているゾフィーの若かりし頃の物語。この本を読む前にミュージカル(ヅカ版2002年花)を見直すという間違った復習(予習?)をしたせいもあり読む前からゾフィーにびびっていたのですが、非常にラブいラブストーリーでおもしろかったです。

フランツ@病弱王子様とゾフィーの禁断というか秘めたる恋が非常にロマンティックでおもしろいなぁとも思ったのですが、個人的にはそこよりさえない旦那とゾフィーの歩み寄りの過程の方が萌えました。ドラマのようなラブストーリーもいいんですが、地味なこういうも大好きだ……。しかしそれ以上に恋をしているゾフィーより政治をしているゾフィーの場面の方がおもしろく感じてしまったというのはコバルト読者としてはすこしどうかと思います。
斜陽のハプスブルクという世界史の結構好きなところ(注:下手の横好き)だけど少しややこしくてテストに出たら気合いを入れないと少し危険な時代背景も、無理なくわかりやすく描写されていてさすがだなぁ、と。

ゾフィーとフランツの恋、そして最後はフランツ・ヨーゼフの見事な青年ぶりに続くこの物語ですが、コレを読んだ後にあのおっかないゾフィーが出てくるエリザベートを見ると「お義母さま」への印象もがらりと変わりそう。流れとしても無理なくつながるしなぁ……、エリザベートの前日譚に勝手に認定したいと思います(違)。つうか、これタカラヅカでやればいいと思うよ……。いけるよ、グランドロマン。息子(ルドルフ)物語あるんだから義母物語もあってもいいと思う。

img帝冠の恋
須賀しのぶ/綾坂璃緒
集英社コバルト文庫(2007.04)
ISBN:978-4-08-601151-8
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