キャンディ・ポップ / 倉吹ともえ

本の感想, 作者名 か行倉吹ともえ

「株とカミには手ぇ出さない」―そんな母の教えを受け継ぎ、安易にカミに頼ることなく生きることにしているランズーカの王女アイリス。しかし、国の未曾有の危機を前に、父王がついにカミ頼みに走ってしまう。父王の祈願成就の代わりに貢ぎ物としてカミに捧げられることになったアイリスだが、父王が願をかけたカミはカミの中でも悪名高いザイオネルであった。父の願いをいっこうに叶えようとしないザイオネルに対し、アイリスはあの手この手で祈願成就を目論むのだが……。


不思議な力で人の願いを叶えることのできる「カミ」と、そのカミに真っ向勝負を挑む王女様、そして王女様いじめが趣味(注:愛情の裏返し)な王女様の幼なじみの繰り広げるドタバタコメディ。カミはいわゆる神さまではなく、人の「欲望」を生きる糧としているのでその欲望を得るために不思議の力で願いを叶える、というようなポジションの何とも得体の知らない生き物(?)。あらすじをよんだ段階では「カミ=神」だと思いこんでいたので、カミの生態が明かされるにつれていろいろと感心してしまった次第です。

いわゆるなんかすごいドタバタコメディでして(特に一話目はかなりコメディ色が強い)、拒否反応が出てしまうかもしれないんですが、第二話、第三話は普通のコメディレベルまで落ち着いた……ような気がします。webにて先行連載されていたときはついて行けるかなぁとちょっと心配になったりしたんですが、紙で読むと件の一話でも普通について行けました。そして、二話三話はかなり楽しめました。……レジー(幼なじみ)が活躍するからかっ!(ザイオネルよりレジーを応援したい所存です)

最初は「カミなんて」とアンチ・カミだったアイリスが、一緒に行動(というよりむしろストーク)するうちに次第にザイオネルのことを理解し、二人が歩み寄っていく過程がよかったですね。ザイオネルは全く素直ではありませんが。アイリス、ザイオネル、そしてレジーの三角関係を軸にこの先進んでいきそうですが……貢がれたとはいえ王女様を野放図にしてしまうランズーカ王国の将来が少し心配です。

imgキャンディ・ポップ
倉吹ともえ/ねぎしきょうこ
小学館ルルル文庫(2007.06)
ISBN:978-4-09-52069-9
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