身代わり伯爵の潜入 / 清家未森

本の感想, 作者名 さ行清家未森

リヒャルトに会うためにシアランに潜入したミレーユ。人間違いで殺されかけて何とか逃げ出したものの目を覚ましたのはシアランの騎士団の駐屯地。リヒャルトのために潜入捜査を決意するミレーユは、記憶喪失と間違われたのをいいことに第五師団の見習いとしての居場所を確保する。雑用ばかりを押しつけられていたミレーユだが、ある日機密書類に触れる機会もある書記官に抜擢されて……


身代わり伯爵・シアラン編の2冊目。相変わらずの無鉄砲思い切りの良さで今度は敵国の騎士団に潜り込むミレーユの奮闘振りを描いたお話でした。どこに行っても「アニキ」的にもてる体質は変わらないようでここでも舎弟を従えてしまうミレーユの人望がすごい。潜入捜査自体は全くうまくいかないのになんやかんやで自分のポジションを確保してしまっているミレーユを見ていると、乙女のパワーというものは侮れないなぁと思います。

一方の追いかけられたリヒャルトの出番は少ないものの、最後に見事にそのへたれっぷりを遺憾なく発揮……かな。いつもよりはへたれてはいなかったのですが、ミレーユがそこまで言うなら受け入れてあげようよ!と思わず後ろからどつきたくなることうけあいです。ここまでくるのにたくさんの大切な人をなくしてきたからこそ、ミレーユにはシアランにいてほしくないという気持ちもよくわかるのですが……、ここまでのことをした石頭はミレーユに復讐されるとよいです。

そしてフレッドお兄ちゃんの「身代わり」とヴィルフリート王子の男前っぷりも中々に光っていましたね。今回の身代わり伯爵はそのままフレッドのことだったのか!と思えばミレーユが身代わりをしていないことにも納得がいくかもしれません(とても苦しいこじつけ)。フレッドを敵に回すほど怖いことはないなぁと思わずにはいられない展開でしたが、親友と妹のために暗躍するフレッドの活躍も今後気になるところ。みごとに当て馬状態というか敵に塩を送りまくって潔すぎるヴィルフリート王子もリヒャルトよりよほどかっこよく、これからの王子っぷりに期待したいところです。

ミレーユの復讐も含め、次がとても待ち遠しいです。

身代わり伯爵の潜入
清家未森/ねぎしきょうこ
角川ビーンズ文庫(2008.10)
ISBN:978-4-04-452406-7
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