金蘭の王国 君とはじまりの約束を / 薙野ゆいら

本の感想, 作者名 な行薙野ゆいら

金蘭国の有力貴族の末姫で毒薬作りという変わった趣味を持つ綺理、綺理の事実上の婚約者である王弟・冬惺、冬惺の従者・翔波の三人は、子どもの頃ある「契約」を謎の淵妖・真羅としてしまい、国を荒らす淵妖とよばれる妖にまつわる重大な秘密を隠していた。種々の事情から王都から離れる必要の出た三人は、淵妖被害が頻発している北部の調査のために旅に出ることにするのだが……


ビーンズ文庫新シリーズ6ヶ月連続刊行の最終作は、元気なお姫様とその幼なじみが繰り広げるアジアンファンタジーでした。メインの3人と謎に包まれている真羅の個性が際だっていて、そして物語の舞台となる世界もしっかり作り込まれていて興味深かったです。泥vs乾というのが(個人的には)結構新鮮で。
創世の謎にまで迫る展開で、大きな話になりそうだなぁと思いました。

3人組はそれぞれがお互いを大切に思い合い、それぞれの長所を生かし戦い方をしているのがよいですね。綺理と冬惺の進みそうで進まない関係も読んでて面白いですし。そして、普段はかなり好青年なのにヒーローに似つかわしくない詐欺師というか性格の悪さの冬惺がおもしろい(敵に対して限定)。
あとは、真羅さんが結構おもしろいです。彼、きっといいツッコミ役になると思うんだ……(あの口調でのツッコミは結構おいしいんじゃないかと思う)。

オーソドックスな展開ながらも、世界の広がりというか、今後三人+一人が立ち向かっていくところとか結構気になるんですが、いかんせん文章のテンポが合わないのがとても残念。ここらへんは個人的な好みというかごくごく個人的な問題なのでどうしようもなんだけど。そういえば、デビュー作もちょっときつかったかなぁ(文書のテンポ的に)。これだけ読むのに5日くらいかかってるので(寝落ち含む)、やはり合わないのだろうかと……。


金蘭の王国 君とはじまりの約束を
薙野ゆいら/香坂ゆう
角川ビーンズ文庫(2008.12)
ISBN:978-4-04-452704-4
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