紺碧のサリフィーラ / 天堂里砂

本の感想, お気に入り, 作者名 た行天堂里砂

海に沈んだといわれる伝説の島シェイン。12年に一度海上に現れるというシェインを見に行くという謎の元海軍士官サリフを船に乗せることになった≪花の乙女≫号の船長ワディム。なぜか海軍に追われているサリフをかくまうことにより、大司教と国王の争いに巻き込まれる事になったワディムは、シェインの謎を知ることになる。


第4回C-NOVELS大賞特別賞受賞作の新人さん。海を舞台に繰り広げられる伝説、そしてその決着に暑苦しい兄弟愛(家族愛)の話でした。海洋、帆船!に惹かれる人はもちろんのこと、兄弟モノズキーの人は読んで損ないと思う(……メインじゃないんだけど)。45ページ~のお兄ちゃんのやりとりがツボなら読むべし。「兄弟愛がすばらしい」(意訳)というオススメを頂いて読んでみたんですが、まさしくその通りで。オススメいただいて感謝。

比較的淡々としている、というか文章に色気というか華がないのがちょっと残念かなぁと思ったのですが、シェインにまつわる伝説やその真相などはあっと驚く展開で、読んでいてとてもワクワクしました。そしてあの人のあの行動は!よく考えたらあの人しかいないんだけどなんかショックだったなぁだまされたなぁ。そしてラスト近くの姉の言葉は泣かせる……。この展開は不意打ちだったのでとても泣きそうになりました。
暑すぎる兄弟愛のくだりは、お兄ちゃん(たちとお父さん)が弟を好きすぎているところが良かったです。思わずにやりとしてしまいました。仲良きことは美しきかな。サリフが決別を口にするシーンは、それぞれがお互いを大事にしているところがよく伝わってきました。
一方の巻き込まれ船長ワディム。頼れるアニキな船長で活躍の場もそれなりにあるんですが、影が薄いような気がします。もうちょっと存在感があってもいいんじゃないかと思いますが、しかし素敵な頼れるアニキでした。

とても綺麗に終わっていて、エピローグのサリフの飄々っぷりに思わず脱帽。とても素敵な物語を読めたなぁと思います。次の作品も読んでみよう。

img紺碧のサフィーラ
天堂里砂/倉花千夏
中央公論新社C-NOVELS FANTASIA(2008.07)
ISBN:978-4-12-501042-7
bk1/amazon