佐和山物語 君と別れの口づけを / 九月文

本の感想, 作者名 か行九月文

輿入れ中「時をわたって」しまい、本来自分がいるべき時間軸とは違う時間軸の嫁ぎ先にたどり着いてしまったあこは、そこで出会った「許嫁」の井伊直継に惹かれる。ようやく元の時間軸に戻る手がかりを得たあこだが、直継への想いを胸に元の場所に帰ることについての不安を覚える。そして一方、井伊家では直継に将軍暗殺未遂の容疑がかけられ、主立った家臣を含め井伊家の面々の動きが取れなくなってしまう。そこにあこの力を狙う大谷吉継までもが現れ……

今までになく盛り上がりましたね(ニヤニヤ)。

戦国末期(日本史は不得手な私基準)のタイムパラドックスラブストーリーの4冊目。タイムパラドックスとなるととたんにあらすじがかけなくなりますが、なんというか、今回はついに元の時間軸に戻ることになったあこと、あこへの想いを強く自覚した直継のそれぞれの想いが通じあるところがですね、とても少女小説的に盛り上がりました。今まで糖分少なめだったので糖分過多に感じます(笑)。ここに至るまでのそれぞれの感情の揺れ動きも丁寧に描写されていたので、つ、ついにという気分でした。

と主人公周辺はおいておくとして、今回あことにわかコンビを組むことにあった主馬殿の本気がちょっと怖かった。人当たりはよいし普段はちゃらんぽらんとしているものの、一旦敵に回すと徹底的につぶしにかかりそうなタイプで、一番敵にしたくないタイプ。読者としては面白いんで問題ないですが、周りの人は大変そうです。そしてお兄ちゃんが大好きすぎる直孝殿もお兄ちゃんとちょっと近づけたようで、よかったね、と。

もうそろそろ物語も収束に向けて進んで行ってるのかな、という終わりでしたが、ここからどういう風に「あこ」と「直継」がつながっていくのか楽しみです。

img佐和山物語 君と別れの口づけを
九月文/久織ちまき
角川ビーンズ文庫(2010.03)
ISBN:978-4-04-454504-8
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