偽神の花嫁 山妖奇伝 / 夏目翠

本の感想, 作者名 な行夏目翠

北の村の村長の跡取りユキヒラは、都の兵に占領された村を救うために妖の民を村に連れ帰るべく山に入る。絶体絶命の危機を妖の民トウサイに助けられた行平だが、トウサイは約定を破ってまで北の村に行く義理はないとユキヒラの懇願を一蹴する。ユキヒラは山の奥に向かうというトウサイについて行くことにするが……

シリーズ最終巻。私のツボ:○○までカバーするという垂涎ものな一冊。

三人組の弟分トウサイが主役の山妖奇伝シリーズ最終巻。シリーズの謎「山に棲まう妖」や「妖の民」の真実もろもろも、ええっ語り出したときは壮大そうな理由かと思えばそれか!と思わずつっこみましたが綺麗に解決した大団円でした。

このシリーズは今回の主人公トウサイの成長物語でもありました。こんなに立派に(ただしやっぱり末っ子気質は健在)、と思わず目頭を……押さえるにはトウサイが惚れっぽすぎる(笑)。今回の花嫁さんの性格からいって、押せ押せのトウサイじゃないとカップルは成り立たないんですが、それにしてもこいつは押してだめんならとりあえずもう一押し、でしたね。

あと、どこまでネタバレしていいか分からないので冒頭では伏せましたが、よく考えるとこれは花嫁ものなのでネタバレも何もないかと開き直って書いてしまうと、なかなかツボをついた男装ものでもありました。やむにやまれぬ事情から男の子として育てられたけれど、トウサイや村人達の言葉で……という男装ものの醍醐味も堪能できたので無条件にポイントが高いです、男装バンザイ!

img偽神の花嫁 山妖奇伝
夏目翠/萩谷薫
中央公論新社C-Novels Fantasia(2010.02)
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