風の島の竜使い / 片倉一

本の感想, お気に入り, 作者名 か行片倉一

ラプシヌプルクルと呼ぶ刀牙竜と共生する竜使いの村の娘レラシウは、竜の群れのイヨッタラプ(頭目)で幼なじみのシノカントに嫁ぐ。女性にしては珍しく竜に乗るレラシウだが、婚儀の夜にシノカントより竜使いに向いていないと断言されてしまう。それ以来、シノカントとぎくしゃくしてしまい、シノカントが不在の間に街からやって来た令嬢シャーロットの荷運びの依頼を受諾するレラシウだが……

シャーロットがかわいかった!

第6回C-Novels大賞特別賞受賞作。汽車や飛行船がなどが整備され現代化が進む世界で、街からの「文明」の恩恵を受けつつも昔ながらの生活を続ける竜の村の若夫婦が主人公。若夫婦の相互理解+街のお嬢さんの大冒険+寂れていく伝統と移り変わる世界、というお話でした。

冒頭ではシャーロットかわいいとか書いてますが、本当にシャーロットかわいい。行動力のある素敵なかわいい素直なお嬢さんというのは気持ちよくていい物ですね。
そして、もちろん若夫婦さんもいいわけです。恋愛を経ずに結婚してるのですが、この分かり合えない夫婦が分かり合う過程もいい!最初はレラシウはかたくなに竜に乗ろうとするし、それを理由を告げずに禁止しようとするシノカントの(読者からすると)不可解な行動、このすれ違いっぷりに本当にこのふたり大丈夫か!とやきもきすることは必死。最後の方のちょこっとおれたシノカントの丁寧語に盛大にすっとーんと(私が)すべったり、いい夫婦ぶりにニヤニヤしたりとこのふたりいいなぁととても和んでしまいました。

近代化と伝統、「街」と「村」の格差、そして守るべきもの・伝えていくものと自分たちの世代で終わることをうけいれることなど、うまくはいえませんが時代の流れに沿って変わっていく人々の生き方も切ないながらも力強く、とても興味深かったです……がなにぶん一冊にいろいろぎっしり詰まっているので読み応えはあるものの、分冊してもっとじっくり描いていただいても良かったかなぁと思います。
この作品の持つ空気はとても好みなので、次回作も楽しみです。

img風の島の竜使い
片倉一/碧風羽
C-Novels Fanatasia(2010.07)
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