佐和山物語 桜色の時はめぐり / 九月文

本の感想, 作者名 か行九月文

直継と無事再会を果たしたあこだったが、戦国が終わったばかりの微妙な情勢の中、あこの発言とその出自から直継はあこを一旦実家に戻すことにする。直継の迎えを信じてまつあこだったが、父から直継との婚約の破棄を言い渡されて……(「空蝉の君」)

……幼なじみ、最後までなんて……(心の涙で前が見えない

佐和山物語の本編完結記念?の短編集。雑誌掲載分2冊に、書き下ろしのしのと采女殿のお話、本編終了直後のお話、合間に挿入される小話にさいごのおまけ話を収録したボーナストラックだったのですが、おまけの短編集というよりがっつり本編でした。時渡り関係は解決したけどそれ以外はまだまだ不穏だよ!という「空蝉の君」が山有り谷有りで大変読み応えがありました。そして、なんというか報われなさすぎる幼なじみに心の涙で前が見えませんでした。男前すぎる……!

主人公周辺も収まるべきところに収まりそうな余韻を残し、そして意外とおちゃめなあこの両親などにシリアスな話のはずなのに笑いをかみ殺したりとお得感溢れる最終巻でした。大変満足!で次回作も楽しみです。

img佐和山物語 桜色の時はめぐり
九月文/久織ちまき
角川ビーンズ文庫(2010.10)
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