メサイア 警備局特別公安五係 / 高殿円

本の感想, 作者名 た行高殿円

引き続きの「軍縮」条約を延長するかどうか世界が重要な選択を行わんとしている中で、首相の息子の護衛を密かに担う海棠鋭利は、「サクラ」と呼ばれるスパイ候補であった。相棒の御津見珀と任務をこなしていく中で、鋭利がサクラの世界に入ることとなったとある事件が今回もかかわっており……

スパイ!コンビ!

トッカン(あ、感想書いてない)みたいな痛快お仕事ものかなぁと思いながらよんだらなんだか方向性が全く違ったソフトカバーのスパイもの。現代日本であって日本でない、世界が「超軍縮」を行うパラレルな世界で、戸籍も住民票もない「死人」として扱われる「サクラ」と呼ばれるスパイたちが、北のスパイと薄氷の上で息詰まる勝負を繰り広げる話。 年齢も出身も、それまでの職業も多種多様な人間が「サクラ」として暗躍しているという設定で、今回は少ししかサクラ仲間が出ませんでしたが、いろいろ濃そうです。

このお話の主人公は「サクラ」の卒業試験を兼ねた任務を遂行する鋭利とその相棒の珀。いろいろあって17歳でのサクラ候補なので護衛対象の友人として学校に潜り込むよ、というなんだかこの設定だけ聞くとはらはら学園生活でも繰り広げられるのかと思うのですが、そんなこと全くなく。ひたすらハードでシリアスなお話でした。

中盤まではこの世界の立ち位置と言いますか、背景がイマイチうまくつかめなかったのでなんとも悶々としながら読んでいたんですが、世界会議が始まる直前くらいからページをめくる手が止まらず。最後のどんでん返しはさすがというかで楽しめました。折々に挟まれる高殿節にも、話の方向性は違ってもさすがだなぁ、と。一部読みながら、我が身を振り返るといたたまれない気分になるところもあるんですが(ここはトッカンと同じかも……)、総じては好きな部類。信者だからな!(色眼鏡は否定しない)

imgメサイア 警備局特別公安五係
高殿円
角川書店(2010.12)
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