女神と棺の手帳 / 文野あかね

本の感想, 作者名 は行文野あかね

軍部が力を持つウェスハバート王国で、史上初の女性医師を目指すケイト。大学の入試直前に突如失踪した親友イライザを心配しながらも試験勉強に励んでいたが、イライザが軍部に発したメッセージにより、「英雄」と呼ばれるイーノット少佐に保護される。イライザの行方を追うイーノットと利害が一致したケイトは、イライザの残した謎のメッセージから彼女の居場所を推理することになる。

意地っ張りな女の子とできる軍人……これはおいしい。

ビーンズ文庫の第10回小説大賞読者賞受賞作品。軍人嫌いの女の子が、止むに止まれぬ事情で軍人さんと協力して親友を探すが、その真相は……!というお話でした。
自分で未来を切り開こうとする女の子の頑張る姿はよいものですし、理想を持った品行方正なできる(かっこいい)軍人さんというものも良いものですし、なにより、「ぐ、軍人なんて!」といいながら、イーノットに出会ったことにより少しずつ軍人さんを見なおしていくケイトの姿がたいそうよいものでした。少女小説っていいなぁ!

イーノットの部下もなかなかおもしろく(え、登場人物紹介に入ってるけど入っていな人のほうがよほど出番が多かったよこれは見た目か!と思う節もあれど)、こういうチームモノというかなんというかは好きなのでこちらも良かったです。ただ、よく考えてみると「ファミリーネーム+階級」呼びじゃなくて「ファーストネーム+階級」呼び、というところにちょっと違和感を感じたり(「ファミリーネーム+階級」予備にそこはかとなくロマンを感じるタイプ)、おいおいまたひっかかって!と多少細かいところにツッコミを入れたくなりましたが、それでも十分楽しめました。

最後も綺麗にまとまっていて、続きが読みたいような、いやでもこの余韻のある終わり方も好みのような、そんな満足感。次回作も楽しみです。

女神と棺の手帳
文野あかね/高星麻子
角川ビーンズ文庫(2012.08)
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