海賊と歌姫―黄金航路と幻の楽園― / 木村千世

本の感想, 作者名 か行木村千世

「聖歌姫」見習いのルーンは家の借金を返済するため、その商才を生かして一攫千金を目指しゴールデン・アップル号を買い取り大海原に乗り出した。しかし、航海に出てすぐ私掠船に襲われ、船と乗員たちの身の安全の代わりに私掠船ファーランド号に乗り込み、ファーランド号が向かう先に同行することになる。ファーランド号の船長アスランやその他の乗組員たちと触れ合うことでファーランド号に馴染んでいくルーンは、ファーランド号でもその商才を発揮することになる。

大航海時代(ゲーム)が終始頭をよぎっていた。

木村さんの新書サイズの読み切りのお話。大航海時代(っぽい)のヨーロッパ(っぽい)世界を舞台に繰り広げられる海洋ロマンですが、面白かったです。序盤はヨーロッパっぽい世界ということをあまり意識していなかったのですが、ああ、これイギリスかー、スペインかー、トルコかー、フランスか!と一つわかり始めると芋づる式にわかって面白かった(笑)。
ルーンの当初やろうとしていた交易方法が「大航海時代(ゲーム)で最初の方にまず地道に資金を稼ぐ方法」だったのに一人でほくそ笑んでしましました。そして、序盤に不幸にも海賊(私掠船)に狙われた日には……泣くしかないですね!そんな泣くしかない状況で果敢に、たくましく生きていくお嬢さまはさすがでした。

ルーンをスカウトしたアスランさんがルーンにアタックをかけ始めた後は、こ、こいつ真顔で恥ずかしいこと並べて!と床ゴロンコースだったのも面白かったなぁ。少女小説っていいなぁ。終盤は思いの外ファンタジーだったのに少々びっくりしつつも、再会の場面等少女小説的に美味しい展開てんこ盛りで楽しかったです。期待を裏切らない王道物語、ごちそうさまでした。

海賊と歌姫―黄金航路と幻の楽園―
木村千世/池上紗京
イースト・プレス(2012.11)
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