写楽あやかし草紙 月下のファントム / 希多美咲

本の感想, 作者名 か行希多美咲

火に焼かれるところを妖を統べる上総に助けられた浮世絵師の楽真は、上総の眷属として生まれ変わった。生まれ変わってから時もすぎ、大正時代の帝都で画廊を営んでいた楽真は妖絡みのトラブルを人知れず解決する上総の指示で、最近妙な事件が頻発する劇場に背景画担当として潜入することになる。

兎三郎兄さんをもふもふしたい!もふもふ!

2012年のロマン大賞受賞作のコバルト文庫の新人さん。面白いよーというお話をどこかで見かけて気になっており、ようやく読みました。そして、どこかで「コバルトじゃなくてビーンズっぽい」という感想を見たんですが、確かにこれはビーンズっぽいな!とも思いました。どこがどうビーンズっぽいかというのは説明できないんですけど、なんとなく全体的に。

それはさておき、兎三郎兄さん(ウサギの妖)ですよ。もうこの話は兎三郎兄さんの一人勝ちでしょう……。上総の手下としての先輩風をふかす兎三郎兄さん。楽真が心配で一緒についてくる兎三郎兄さん。うっかり劇団員の女の子に捕まって肝心なときに役に立たない兎三郎兄さん。なんのかんのと楽真の世話を焼く兎三郎兄さん……良いうさぎでした。

いやもちろん、楽真の「上総の眷属」になったがゆえの葛藤や、劇団の看板女優の月歌の最後の「告白」シーンなどいろいろ読み応えのあるシーンはたくさんあったんですが、私は兄さんに引っ張られちゃいまして……。なかなか楽しめた一冊でした。

写楽あやかし草紙 月下のファントム
希多美咲/湖住ふじこ
集英社コバルト文庫(2012.12)
amazon/honto