ザ・藤川家カンパニー あなたのご遺言、代行いたします / 響野夏菜

本の感想, 作者名 は行響野夏菜

著名な写真家・藤川三理を父に持ち、30歳を筆頭に中学生までの6人の異母きょうだいが一つ屋根の下に暮らす藤川家に、三理の隠し子だという十遠がやってきた。「いい子」の十遠は若干普通の家庭とは異なる事情を持つ藤川家でもうまくやっているように見えたが、藤川家長女の七重だけは十遠に感じる違和感に彼女に馴染めずにいた。

七重・八重・九重の三つ子ちゃんがいいものでした。

「集英社文庫のいきなり文庫」での初めての響野さんの作品は、少々特殊な事情を持つ「藤川家」を舞台にした家族ものでした。「遺言代行業」を営む長男四寿男を筆頭に、3人の母親から生まれた6人のきょうだいがわいわいがやがやと(文句をいいながら)遺言代行業を手伝っており、そこにどーしようもない父親の隠し子がやってきて小さな波乱がおきそうで……というお話でした。遺言代行業というのが面白く、単発または4回くらいのドラマになっても違和感のない話に感じております。

全4話で4話それぞれ違う遺言を取り扱うのですが、一本の話としては十遠が藤川家にもたらした変化を描く作品かと。最初は主人公は長男かと思っていたのですが、長女七重ちゃんが主人公ポジションで、七重が十遠に感じる違和感と不審がどんどん大きくなっていって最後は、というところだったのですが、この七重が感じていた「喉の奥に刺さってるような気がする魚の小骨」のようななんとも言えない違和感が個人的に非常に苦手なので、なんともいえずもやもやしながら読んでいました。最後の最後はきれいにスッキリまとまっていてよかったんだけど、やっぱりこの手の違和感は不気味で苦手だ(そして、不気味に感じているところが狙い通りなのだろうな、とも思います)

ザ・藤川家カンパニー あなたのご遺言、代行いたします
響野夏菜
集英社文庫(2013.12)
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