花の懸け橋 浪花ふらふら謎草紙 / 岡篠名桜

本の感想, お気に入り, 作者名 あ行岡篠名桜

千代太郎の祖父から花歩に峯岸家に嫁ぐことを提案された花歩は、その後千代太郎から武家の女は似合わないという一刀両断にされてしまったことも重なり、町案内中にミスをして怪我を負ってしまう。旅籠を継ぐか、峯岸家に嫁ぐかの選択を迫られる中、花歩の元に

この千代ちゃんがひどい(褒めてる)。

旅籠の養子の花歩が父親を探しながら大坂の町を案内しつつ、ちょっとした事件に巻き込まれながら幼なじみの同心に助けられつつで、その同心の祖父(ご隠居さん)に嫁に!といわれて千代ちゃんは好きだけど!と悩むお話、完結編。物語の持つ空気感はそのままで、最後の最後にきれいな大団円ですごくよい物語を読みました。楽しかったー!

今までは「花歩が父親の手がかりを大坂の町で捜す」という軸はあるものの連作短編(中編)だったのですが、今回は最後ということもありお話は一本。花歩が怪我をすることから始まり、その知らせを受けて馴染みの町人や旅籠の客が花歩を心配して……というお話だったのですが、いろいろきれいにつながってひとりで感心していました。
外堀をうめられまくるものの、花歩のために距離を置こうとする千代ちゃんの内面が直接語られることはなかったのですが、しかし、家族のみんなが語る千代太郎が花歩にベタぼれ過ぎて、動悸息切れ(笑)。本人が語らないだけに余計に。そして私の冒頭の感想が、千代ちゃんが観念した一言に対するコメントなんですが千代ちゃんらしくていいですね!ここだけ「幼なじみの二人」に戻るとかひどいですね!そりゃ花歩も落ちるわ!そして最後まで読むと今回のサブタイトルもぴったりで、いいなぁ!としんみりしてしまうよい結末でした。

といろいろ楽しかったので、岡篠さんの時代物に今後も期待です。

花の懸け橋 浪花ふらふら謎草紙
岡篠名桜
集英社(2014.12)
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