鬼舞 見習い陰陽師と囚われた蝶 / 瀬川貴次

本の感想, 作者名 さ行瀬川貴次

先日の事件で陰陽師不足に陥った陰陽師寮では、晴明の長男・吉平を陰陽師に昇格させるという話が浮上していた。陰陽師になるのなら吉昌と一緒にと主張する吉平は、後輩たちを特訓することで吉昌の心配事を取り除こうと吉昌、道冬、そして守方らとともに大往生院で再び修行を行う。一方、道冬が留守にする六条の河原院には野党が入り、香炉が盗まれてしまう。

吉平の弟愛が重すぎる。

最終章突入の鬼舞、最初は吉平の暑苦しい愛が暴走しており、最終章ということがあまり感じられず「吉平の愛が暴走する話」かと思ってしまうほど吉平が輝いていた前半で、俗世にまみれた大往生院でのドタバタと同時並行で起きる野党騒ぎに謎の美女がつながっていき、行方のしれないあの方たちも……と最後の方は最終章の盛り上がりにふさわしい展開でした。序盤の吉平がまるで子犬で笑っていましたが、同じくらい笑ったのは野党騒ぎの付喪神たちの大活躍です。道冬の愛を巡って争う二人に芽生える友情。育ちのよい香炉にツンデレ畳、ノリは女子高か。そして皆に平等に愛を注ぐ道冬。お前は別け隔てなく笑顔を振りまく学園のアイドルか(たのしい)。

ページ数自体はそれほど多くないのに中身は詰まっていて、そして笑える展開の連続のだったのに自然とシリアス展開になっていくのはさすがだなぁと思いながら、続きも楽しみです。

鬼舞 見習い陰陽師と囚われた蝶
瀬川貴次/星野和夏子
集英社コバルト文庫(2015.06)
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