皇女アナスタシア~もう一つの物語~ / 一原みう

本の感想, 作者名 あ行一原みう

1920年にドイツでロマノフ朝の最後の皇女アナスタシアを名乗る女性が現れる。今まで何人ものアナスタシアが現れたが、今度のアナスタシアは本人しか知り得ない情報を知っているという。ロマノフ家に最後まで付き添った侍医の息子でアナスタシアの幼なじみのグレヴは、本人かどうかを確認するためにドイツに向かう。彼の胸のうちにはアナスタシアと過ごした最後の数年があった。

コバルト流のアナスタシア伝説の真相を描いた一作、面白かったです。

一原さんのコバルト文庫のデビュー作品。面白いという話は聞いていたのですが読んでおらず、なんとなくそのままにしていたんですが、そのままにしていたのがもったいないなぁというくらい面白いお話でした。

生死不明のアナスタシアが実は生きていた!という作品はいくつかあるようですが、まともにその題材を扱っている作品で初めて読んだように思います。あらすじから考えて、本当にアナスタシア本人かを確かめていく話かと思い込んでいましたが、実際はアナスタシアとグレヴを中心に、ロマノフ朝の崩壊を描いたお話でした。
できる範囲で、そして弟のためにも自分の思い通りに生きようとするアナスタシアに、彼女に振り回されるグレヴ。病弱ながらも芯のが強い皇太子のアレクセイにラスプーチンとその娘の神秘的なマトリョーナのそれぞれの生き方が壮絶でした。とくにアナスタシアのためのクライマックスの一連の流れがすごかったなぁ。実は序盤は(面白いんだけど)なんだか今一つかなぁとか思っていてすいませんでした。

皇女アナスタシア~もう一つの物語~
一原みう/凪かすみ
集英社コバルト文庫(2014.11)
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