黒猫菓子店初恋日和 / 宇津田晴

本の感想, お気に入り, 作者名 あ行宇津田晴

女ながらに努力が認められ菓子職人として親方の資格を得たマリエルだが、父が急死し、婚約者には店を乗っ取られさらに着の身着のままで森に置き去りにされてしまう。ジルと名乗る森で世捨て人のように暮らす青年に助けられたマリエルは、ジルの知り合いの口利きで国でも屈指の青年実業家からの出資を受けて新しく店を始められることになり……

ジルが自ら掘った墓穴に自らはまって身動き取れなくなっている様子が楽しかった。

安心安定の宇津田さんのラブコメは、菓子職人の女の子と彼女を助けたひねくれた青年の物語。いや、早く気付いて!ふたりとも早く気付いて!と何回か突っ込みたくなりましたが、このジレジレ感がとても良いものでした、よいものでした……。ジルに拾われたという点では先輩の、同居人の双子ちゃんたちはかわいくて、ダンディなおじさまも出てきて、街を追われたマリエルをサポートする馴染みの人々も頼りになってで、ヒロイン周りの登場人物が心強く、それに対しての悪役が宇津田さん至上でも1・2を争うくらい後味のわるい小悪党で、成敗したジルの「次は社会的に抹殺」というさわやかな笑顔が爽快でした。

やっぱり宇津田さんのラブコメはいいなぁと思える作品でしたので、次回作も楽しみ!

黒猫菓子店初恋日和
宇津田晴/山下ナオ
小学館ルルル文庫(2015.12)
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