死にかけ聖女と皇帝の帰還 / 藍川竜樹

本の感想, お気に入り, 作者名 あ行藍川竜樹

辺境の修道院に預けられ、修道院の運営費用を稼ぐために「聖女」を演じ続けているルチア。ルチアの血に奇跡が宿るという設定のため、常に貧血状態で死にかけていたルチアだが、ある日修道院に皇太子クラウディオが訪れ、ルチアを連れて教皇に面会しにいくという。偽物聖女であることがバレる前にクラウディオのもとから逃走しようとするルチアだが、クラウディオと行動するうちに……

引き続きおもしろかったー!

前作の「死にかけ花嫁」カップルの子供世代のお話で、前作カップルの息子(クラウディオ)と彼に利用される「死にかけの聖女」のお話。今回は前作の爪痕から復興しつつある帝国の頼りがいのある皇太子さまと、一生懸命な偽聖女さんがもうムフフというほかない距離感でいいものでした!こういうの大好きだ!皇太子という立場から一歩引いてルチアに接していたはずのクラウディオと、クラウディオに生きるための理由に気付かされたルチアのこの少女小説的に非常におしい展開がこれまたよいものでして。

「奇跡」を起こすための「修道院一同での本気のペテン」はその心意気やよし。そのペテンのプロフェッショナルからしたら雑な他の「奇跡を起こす聖者候補」をやり込めるのも爽快でした。そして、うまく行っていると見せかけてどんと落として、そこからみんなで反撃するのも楽しかったなぁ。やっぱり大河少女小説は読んでて楽しいのでよいものです。

死にかけ聖女と皇帝の帰還
藍川竜樹/加々見絵里
集英社コバルト文庫(2016.09)
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