これは経費で落ちません!~経理部の森若さん~ 1・2/ 青木祐子

本の感想, 作者名 あ行青木祐子

入社以来経理一筋の森若沙名子は、過不足なく完璧な人生を送っていると自負していた。イレギュラーのない規則正しい生活を第一とする沙名子だが、彼女のもとにいかにも怪しい経費の精算の申請をもってくる営業部員がいて……

あー、わかるー(経理部じゃないけど)というようなお仕事小説でした。

いつも沈着冷静、イーブンたれという信条の森若さんが、マイペースな営業部員(エース)に振り回されつつ、社内の怪しげなお金の流れに気付いてしまい気付いたからには原因を追求せねばなるまい……とひっそりと暗躍するお話。森若さんの「予定狂うのいやだし、夕飯の予定狂うの嫌だから予定外の仕事の後のご飯などは言語道断」という考え方が、非常に、非常によくわかりました……そうだよ、予定狂うのは嫌なんだよ……。
社内の悪事をさばく痛快お仕事小説!かと思っていたんですが、森若さんテンション低くてそういう意志はあんまりないので(怪しいものは確証を得るまで調べるし業務上必要な注意はするが積極的に断罪はしない)、なんというか、こう、若干ストレスがたまるというか。面白いんだけど、え、いいの?と思うことが何点か。ヴィクトリアン・ローズ・テーラーの時から「はっきりしないもやもや感」を残しつつ話をすすめる作者さんではあったので、このあたりは作風なのかなぁとも思うのですが。ただ、今作はたしかに全く問題のない経費もあったんだけど、それグレーというかむしろアウトだろう……(さすがにさすがの事件は落とし前がつきましたが)、次から次へとこういう問題起きてこの会社のコンプライアンス大丈夫なのか……といろいろと現実がちらついて心から楽しめないという非常にもったいない思いを噛み締めていました。

女の人って怖っ(面倒くさっ)、とか若干トラウマが刺激されその他にもいろいろと素直に楽しめないところもあったんですが話自体は面白いし、だんだんと「イレギュラー」に慣れていく森若さんの様子を見守りたくもあるので続きも出るのなら読みたいです。

これは経費で落ちません! ~経理部の森若さん~
青木祐子
集英社オレンジ文庫(2016.05)
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これは経費で落ちません!~経理部の森若さん~2
青木祐子
集英社オレンジ文庫(2017.04)
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