2007年2月の本の感想



桜の國の物語〜ひのこだま〜

カガミコ/萩谷薫(イラスト)B's-LOG文庫bk1amazon

大火を出し、余所の男と駆け落ちをした母を持つ篝は本家での奉公生活を強いられていた。そんな彼女の心の支えは、彼女を育てた祖母と従姉であり本家のお嬢様である美津だった。そして、もう一人、篝の前に年に一度現れる流星と名乗る不思議な男。見せ物小屋の座長をしているという流星は何かと篝に気を回してくれていた。

B's-LOG文庫の新作(新シリーズ?シリーズ化するかは分かりませんが)。面白かったし、オトメゴコロに訴える場面もてんこ盛りでしたし、よかったとは思うのですが……、(個人的に)読みにくくて非常に残念。一人称で進んでいく物語なのですが、この視点が変わりすぎてなんとも中途半端な印象を持ちました。ヒロインに対して特段思い入れを持てなかったのがこれまた残念といいますか……。あとは、予告なしにプチホラー展開を見せてくれたのがちょっと苦手(←怖いの嫌い…注:この物語は大して怖くないです)。
それ以外については、少女小説的にも概ね楽しめましたです。苦境に立たされているヒロインに、決まった季節にだけ彼女の元を訪れる謎の男……、ここにピンとこなくてどこに来るんですか、という感じで。
今回ちょっとだけ顔出しした見せ物小屋の他のメンバーもかなり気になるところ……、姐さん的存在のアノお方が気になります(笑)。
Feb/26/2007 ↑TOP
 


お狐サマの言うとおりッ!

かたやま和華/風都ノリ(イラスト)B's-LOG文庫bk1amazon

父の残した剣術道場を兄と二人で切り盛りする桐緒だが、剣術などはやらない太平の世の中でぱっとしない毎日を過ごしていた。ある日通りすがりに白猫を助けた縁で九尾の狐に取り憑かれることとなった桐緒は、憑き主を主とも思わない美形で高飛車な紗那王に振り回される毎日を送ることになる。

変換が結構面倒くさいタイトルの本作、良い感じにドタバタラブコメでした。うん、楽しかった。前向き元気なヒロインに、高飛車なお狐さま、そしてぬらりひょんな兄(たち)と個性的なメンツが揃っていて、一気読みさせてしまう魅力がありました。桐緒はハイカラさんな明治・大正のお嬢さんのイメージでした(江都というあくまでも架空の世界が舞台なので何でもあり、というところお得といいますか)。
ヒロインたちよりむしろ兄たち(しかもただのぬらりひょんじゃない)の方がなんだかお気に入りというのは何か間違っているような気がしますが、果たして続きはどうなることやら。ラブ的にも発展の余地はまだまだありますので、このあたりの展開にも大いに期待です。
Feb/23/2007 ↑TOP
 


猛れ、吹き荒ぶ沖つ風 幻獣降臨譚

本宮ことは/池上紗京(イラスト)講談社X文庫WHbk1amazon

光焔を制する方法の糸口を見つけたアリアは今まで以上に必死に知識を蓄えようとする。そんなアリアを利用しようと、騎士団で王宮で様々な思惑が交差していた

幻獣降臨譚第4巻。ま、また男性キャラ増えた……(遠い目)。正直な話、2巻くらいからこの増加に対応できておりませんので、多数の方々に対して「これ、何してる人やったっけ?」と、登場人物紹介に舞い戻ること多々。こんな状況でも十分楽しめているのは何か間違っているかもしれませんが。
さて、内容は終盤くらいまでは順調に面白く、そしてラストはいつものごとくえええ、と言わずにいられない展開でした。いつもながらにして憎らしいこの幕引き、上手いなぁ。しかし、今回のこれ以上その話題に触ると絶対死亡フラグになる、なると思っていたら本当になった(実際は次を読まないと分かりませんが)という展開(ネタバレのため一応隠し)が非常に王道で、ちょっとびっくりです。ここまでストレートにやられるとかえって効果的です。
女の子同士のやりとりはやっぱりいいなーと思う一方で、いろんな人がだんだん本性見せ始めて腹黒くなってきてしまいました。アリア争奪戦も新規参入あるもののここにきてシェナン大きくリードかっ!?という感じでまた新しい展開です。続きが楽しみ。
Feb/17/2007 ↑TOP
 『繙け、闇照らす智の書 幻獣降臨譚


風の王国 花陰の鳥

毛利志生子/増田メグミ(イラスト)集英社コバルト文庫bk1amazon

ソンツェン・ガムポ王が二人目の妃を捜しているという話を聞き、妃候補に名乗り出たティモニェン。求婚者から逃げ、「王の人となりを確かめたい」という通常では考えられない動機でお妃選びに参加したティモニェンは、最終選考まで残ってしまう。

リジムの父母世代の話。本編というよりは外伝的位置づけの一冊でした。若かりし頃の大王がかっこえーと普通に楽しんでおりました。そして何より、今巻のヒロイン・ティモニェンが良かったです。「自分の目で確かめたい」とお妃選びに名乗り出る行動力に聡明なところと非常に好感の持てる女の子でした。出番は少なかったものの、ティモニェン兄の苦労性な所と妹を思いやっているところがとても印象に残っています。兄、もっと出番があれば良かったのに……(笑)。
このシリーズの(ラブ以外の)醍醐味でもある裏でうごめく陰謀もいつも通り「なるほど」と感心すること多々。しかし、最後はかなり駆け足気味だったかな?ラスト、もう数ページあるかと思ってページめくったら、後書きでした。もうちょっとこの世代のお話を読んでみたいなーと思った一冊でした。
Feb/16/2007 ↑TOP
 『風の王国 臥虎の森


ダナーク魔法村はしあわせ日和〜ひみつの魔女集会〜

響野夏菜/裕龍ながれ(イラスト)集英社コバルト文庫bk1amazon

ひみつの魔女集会が執り行われる『冬始まりの日』の夜は魔女以外は外出してはならない−警察署のお手伝いシーカーはそんな掟を破り、魔女集会をのぞき見してしまう。魔法鍋に放り込まれることが決定してしまったシーカーを助けるために、イズーはダナーク村の警察署長として魔女会館に乗り込んだ。

シリーズ第2巻はヒロインの突撃魔女ビーと署長のイズーとの距離がぐっと近づいた1冊でした。1冊目を読んだときは何となくこの話好きだなー、程度だったんですが今回で大きく印象が変わりました。もう大好き。無意識のうちにビーのために行動を起こしてしまい、ふと我に返りある意味の自己嫌悪に陥っているイズーなどなど読んでいて思わずにやりとする場面多数。コバルトっていいですね。
今回はこの世界の「魔法」の真理やダナーク村の謎など、物語の根幹部分に関する謎もちらりと見え隠れで非常に気になるお話でした。そして明かされるあんな人やこんな人の正体(?)。その中でもさぼり魔ギャラントさんはちょっと予想外。こちらもいろいろとありそうです。
イズーの過去や、ビーの抱えるもの(想像よりもかなりシリアスそうです)が今後どのように物語に関わってくるのか楽しみです。
Feb/10/2007 ↑TOP
 『ダナーク魔法村はしあわせ日和〜都から来た警察署長〜


ねじまき博士とガラスの時計

樹川さとみ/うたの(イラスト)集英社コバルト文庫bk1amazon

ゴシップ新聞の記者ナターシャのターゲットになってしまったアレックスは、周囲のあれやこれやがスクープされる毎日を送ることになる。スクープのお陰でリーの実両親を名乗る人物や他の記者が家の前に列をなす事態になるが、アレックスはいつも通りの偏屈博士ぶりを発揮する。

”ねじまき博士”シリーズ、三冊目で気が付いたら最終巻。事前の予告がなかったので最終巻であることに驚きました。そして内容としては、最終巻といわれればそうですね、と頷けるようなおおかたのことに結論が出された大団円でした。
かなりハイスピードで明かされていく物語の謎がいろいろと驚きでした。あんな人やこんな人の真実なんてもう予想もつかなかったです。どうやら、味のあるカボチャは最近の流行みたいです(某作品のかぼちゃを思い出しました)。最後まで「ヒーロー:リー、ヒロイン:博士」という間違った図式が崩れなかったところが良かったです。リーはオトコマエだなぁ。1巻や2巻で大活躍のオリビエ兄妹たちやなんやらがちょい役でしか出ていなくて残念だな、と思ってしまったのですが、最後まで楽しめたシリーズでした。終わるの早いー。
Feb/08/2007 ↑TOP
 『ねじまき博士と謎のゴースト


始まりのエデン 新たなる神話へ

榎田尤利/北畠あけ乃(イラスト)講談社X文庫WHbk1amazon

ユージン・キーツとの最後の対決のために"エデン"に向かったフェンリルは、そこがかつて自分が生まれ、育った島だったということを知る。一方最後のシャーマンを求め、かつての日本に渡ったサラたちは、マーロン博士の残した遺産を手に入れる。

神話シリーズ最終巻。今まで表に裏に暗示されていた結末とはいえ、結末とはいえ……。心の涙どころか本気で目が潤んで字がかすみました。破綻もない、きれいなラストでハッピーエンド大好き人間でも良かった!と思えるようなラストだったんですがしかし(軽く混乱中)。
え、これあと一冊で終わり?ちゃんと終わるの?と思ったのですが、ちゃんと終わってしまいました。ただ、大分と駆け足感は否めなく、もうちょっと書き込んでほしいな、と思ってしまうところもあったのは事実で。面白かっただけに、もったいないと言いますか。
何はともあれ、シリーズタイトルがコロコロと変わるんですが基本的には一本モノで、少女小説的にも大変オススメのシリーズです。次の(私も逃げずに読める)作品はビーンズで東洋ファンタジーだということが作者さんブログに書いてあったのですが……、楽しみです。
Feb/05/2007 ↑TOP
 『銀の騎士 金の狼 新たなる神話へ


少年は、二度大陽を殺す 若き宰相の帝国

和泉朱希/唯月一(イラスト)角川ビーンズ文庫bk1amazon

砂漠生まれにしては珍しく金髪碧眼を持つヤン。彼は旅の途中で立ち寄ったアグラス王国で父を連れ去った一団と同じ制服を着た軍団が王宮を襲うところに遭遇してしまう。イウサール王子と共に逃げ出すことに成功したヤンは、軍団の目的が王子もヤンも持つ不思議な笛だということを知り、一緒に行動することになる。

新人さん第一弾その2。面白かったです。骨太系のファンタジーで、妙な軽さやなんやらがないところが好感触です。淡々と進んでいる印象はありましたが、笛の謎のあたりは非常に気になり、ラストにはそうくるか、といい意味で裏切られました。そしてあのご兄弟にはすっかり騙されておりました。絶対敵のままだと思っていたのに分かり合えるなんて!(ネタバレのため一応隠し)王子の成長ぶりや、王女やもう1人笛の持ち主の踊り子さんもかわいくかっこよく、このあたりも好みでした。
ベタほめしてますが、一部では個人的に合わないところもありましたし(登場人物たちの一部の考えや行動がどうも好きになれなかったり)、タイトルにもなってるのに宰相影薄っ!とも感じましたが、そこら辺はまあいいか、と流せる程度の欠点。こちらも正面切って「つづく」のラストですが、はたしでどんなもんでしょうか。
Feb/04/2007 ↑TOP
 

アラバーナの海賊たち 幕開けは嵐とともに

伊藤たつき/七海慎吾(イラスト)角川ビーンズ文庫bk1amazon

アラバーナ大陸では珍しい金髪碧眼を持つジャリスは、孤島で行き倒れていたところを商人のゴダートに助けられた。記憶喪失のジャリスは自分が何者かの手がかりをつかむため、ゴダートの館で開かれるという宴に出席し、有名な海賊プス船長に会おうとする。

新人さん第一弾。記憶喪失のジャリスがひょんなことから凄腕美形の商人に拾われて、記憶を取り戻して、ちょっと大きな事件に絡まれて、記憶を取り戻して元の場所に戻って行くというお話。前情報をよくつかんでいなかった自分も悪いのですが、ランプ水差しの精やら悪霊やらの超常現象系の話だとは思ってもみませんでした。せっかくの記憶喪失なのにもったいない!とかジャリスのその力はあまりにも唐突!とかいろいろ思うところもあるんですが、ジャリスの性格や勢いで読ませてしまって「おもしろかったなー」と思える所は良かったです。
「かくて、冒険の旅は始まる」といういかにも続きがありそうなラストだったんですが、これ1冊で個人的には十分かな。続きが若干気になることも確かなので(そしてこのレーベルなら続きは確実に出るでしょう)、悩みどころです。

この物語、「アラビアン逆ハレーレム冒険譚」らしいんですが、逆ハーレムについて意見を聞きたいです編集部。この時点では逆ハーレムじゃないじゃないですか……。たしかに少年から美形、正当派、おっさんまで各種揃っているけど逆ハー必須要素「主人公にみんなメロメロ」というところがないですよ。みんな主人公のことは好きだけど、「家族愛」的好き以上ではないような気がしてしまいました。ビーンズさんは紹介の仕方が大げさで惑われれて買うことが多いです(←そろそろ慣れろ)。
Feb/02/2007 ↑TOP