2003年9月の本の感想


昏迷の都エウルコ アグラファ6
三浦真奈美/那知上陽子(イラスト)・C-Novels Fantasia【bk1別窓版

長らく囚われていた父セル・クラウディスの処刑が決定したことを知り、ミオはレシェフとともに急いで任地からエウルコに戻った。しかし、その決定を覆すことなどできるはずなどなく刻一刻と時が過ぎていく。そして、無断で任地を離れたミオに対する処分を下すための軍法会議が開かれることとなった。

女っ気のがまったくないのですが(別にそれはそれでおもしろいのでかまいやしませんが。それにしても、女性がいない巻でした)、クライマックス間近ということで盛り上がっております(次がラストとか……)。メインは親子の再会。うわ、こういうの本当に弱いんですよ(参照:デルフィニア戦記。期せずして同じレーベルですね)。今回は終始心の涙腺が緩みっぱなしだった。ラストはラストでこれまた「えーっ」という締め。アクマな終わり方でもないものの、その前に起こっていたことがまさにアティス(ミオの国)を大きく揺るがすものであるだけに、次に起こることが予測不能で待ち遠しい。
そして、巻末にはあの幻(?)のベウ副官の短編がっ!めちゃくちゃ読みたかっただけにうれしい。そして、読んだあとは今まで以上に副官に愛を感じてしまった(笑)。
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 『残光のアティス アグラファ5

第61魔法分隊2&3
伊都工平/水上カオリ(イラスト)・電撃文庫【bk1別窓版

カリス教団を調査するために故郷をあとにした61分隊の面々。デリエルは臨時の分隊長として単身、近辺で起こっていたカリス教団がらみの事件を調査する。そして、他のメンバーは王都に赴き、それぞれの方法で教団に対抗する手だてを見つけようとする。

読むのに間が開いてしまった魔法分隊の2冊目と3冊目(これまた、あらすじが書きにくいので↑には若干ウソが含まれているような気がします)。1冊目の内容をほとんど覚えてない状態でのスタートだった(前の感想は何の役にも立たなかった)けど、えいやと2冊連続で読破してしまった……。イラストの雰囲気からしてもっとほわほわっとした感じの話だという先入観があったのだけど、見事それを覆すような内容(ということに、前も驚いていたような気がしなくもないけど……)。政治的な対立、隠された戦争の歴史、すべてが”善”ではないいわゆる「主人公」側の人間。読み応えあります。
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 『第61魔法分隊

レディ・ガンナーと宝石泥棒
茅田砂胡/草河遊也(イラスト)・角川スニーカー文庫【bk1別窓版

前回の事件で親しくなったミュリエルの家を訪ねる船旅の途中で、キャサリンは偶然にも駆け落ちを実行しようとしているカップルの会話を聞いてしまう。この駆け落ち事件をきっかけに、キャサリンは宝石泥棒を追いかけることに。

(読むのに)随分間が開いてしまいましたがとりあえずレディ・ガンナーシリーズの最新作。今回はおなじみの用心棒4人組も活躍するけれど、それよりも表紙にきている「美(少)女3人組」の方が活躍していたかと(笑)。それぞれタイプの全く異なる3人だけど、いいコンビネーションですねぇ……。憎めない”お姉様”タイプも好みなので、3人の中ではアンジェラが好き(しかしアンジェラのことなどすっかり忘れ去っていた人間)。やはり女の子が活躍する話はよいものだ。
一冊完結、次がどうなるんだろうというわくわくしながら読める娯楽性、茅田さんの魅力がいっぱい詰まったお話。
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 『レディ・ガンナーの大追跡

瑠璃色の夜、金の朝
甲斐透/春日桃子(イラスト)・新書館ウィングス文庫【bk1別窓版

ダニエルと出会って1年半、ミオーニはダニエルの従者をしつつウェイミス王国にたどり着いた。そこで偶然であったのはダニエルのかつての盟友ラドリ。彼はダニエルとミオーニにそれぞれ『忠告』をする。その忠告に2人の心は揺れ動き……。

ずーっと続きが読みたくて仕方がなかった『金色の明日』の続編。内容は一言で言ってしまうと、「お父さん、恋心に気づく」(笑)。相変わらずのミオーニの一生懸命ぶりと、ダニエルの鈍さが相乗効果で素敵に作用していたように思う(本人たちにとっては素敵なんてとんでもない!といった状態なんだけど)。お互いを大事にするためにすれ違ってしまう、という古今東西はずせないストーリー展開がもう大好き。
書き下ろしの短編は、ダニエルの妹・シャーロッがウェイミス王国にやってきて、ダニエルをおもちゃにして遊ぶ話(笑)。いつもは見られないあわてふためくダニエルがおもしろい。シャーロットはもしかしなくても最強。
続き無いかな〜。ミオーニが成長した様子が見たい!(ちょっと欲張り)
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 『金色の明日

KLAN5 苦闘編
浅野智哉(原案:田中芳樹)/いのまたむつみ(イラスト)・集英社スーパーダッシュ文庫【bk1別窓版

風子を助け出しインドから帰国した虎之助たちは、虎之助の祖父の神社に身を寄せていた。そこで虎之助は叔父・孝行が美笛と結婚し第一線を退くことを告げられる。若い3人のハムランムルで戦わなければならなくなった虎之助たちの前に、アリョーシャのかつての知己・ルシアがリンフォード伯爵の命を受け襲いかかってくる。

また書く人変わりましたよ、の『KLAN』。なんて言いますか、登場人物の性格変わってませんか?(手元に他の本がないので確かめようが無いんだけど)全体的に明るくなっているといいますか。特にルネは変わったような気がする……。
それはさておき、アリョーシャっ!なお話だった。アリョーシャがかっこよかった。普段ひょうひょうとしたお調子者っぽいアリョーシャが工作員時代の知識を動員して虎と乗り込む場面はかっこよかったと思った。でも、最後てっきりルシアは新たな仲間になると思っていたのに、さっくり逝っちゃって残念。孝行おじさんが戦線離脱したから、一人また増えても楽しいんじゃないかな、と思ってたから(ネタバレ警報発令中)。
いのまたさんの華麗なイラストにうっとり。読了後にアリョーシャとルシアの美形2人組の表紙を見ると少し感慨深いものがあるかも。
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 『KLAN』(霜超かほる・著)

魔女の結婚 悲しき鏡像の天使
谷瑞恵/蓮見桃衣(イラスト)・集英社コバルト文庫【bk1別窓版

再びステファンの元に身を寄せ彼の婚約者として日々を過ごすことを決意したエレインはマティアスへの思いを断ち切れずにいた。一方、マティアスは父親・オズワルトの悪夢にうなされていた。

先が読めん〜、とぶんぶんと何かを振り回したい衝動に駆られる新刊(いえ、先が見えないからこそ楽しいんですよ)。前回復活した悪役・ダイルとマティアスの心の強さの差が対比されたお話だったかな。ダイルの行動も、そのたどってきた境遇から理解できるはしますが、少女小説的にはやはりマティアスの方がかっこよかった……。現在、大半の登場人物が何かを悶々と思い悩んでいる状態(何を考えているかよくわからない人物も一名含む)で、はっきりせいやっとつっこみたくなるのは山々ですが、それもこの物語の醍醐味かな?すでに割り切ってしまっているミシェルはすがすがしくて気持ちいいぞ(笑)。
さて、個人的には誰がなんと言おうとステファンよりマティアスです。応援しています。
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 『魔女の結婚 星降る歌は巡る

六花に抱かれて眠れ 少年陰陽師
結城光流/あさぎ桜(イラスト)・角川ビーンズ文庫【bk1別窓版

一騒動落ち着いたものの悪夢にうなされていた昌浩(かの晴明の孫)は、なじみの雑鬼に都の異変を知らされる。なんでも、正体不明の百鬼夜行が夜な夜な繰り広げられているらしい。さっそくもっくんと調査に向かう昌浩だが、どうやら背後には晴明をつけねらう謎の女術者も絡んでいるらしく……。

今回はいつもよりちょっとおとなしめだったかなぁ、という印象だったんだけど、十分おもしろかった。紅蓮の謎の過去にかかわることが少しずつみえてきて、黒幕発覚か?といったところかな。今まで出てこなかった十二神将たちもおもしろい……。それでもって、一番愛を注がれているのは、なんとなく六合かなぁ、という思いが強まった(笑)。だって、結構いいとこ取りじゃないですか。今回一番ツボだったのは将来のことを案じる昌浩父。こういう”いいお父さん”ってほんとツボだ。安倍家の人々っておもしろそうな人が多いから、いつか安倍家の日常をつづった話が読んでみたい。
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 『禍つ鎖を解き放て 少年陰陽師

翼のない天馬 サンク・ヴェリテの恋人たち
橘香いくの/江ノ本瞳(イラスト)・集英社コバルト文庫【bk1別窓版

シャロンとラウールの結婚を妨害するために、ローランスからラウールの叔母・デュヴァリエ公爵夫人がやってきた。なんとか淑女らしく振る舞い公爵夫人を撃退しようと考えるシャロンだが、その前に森の中で強盗に襲われる青年を発見してしまい……。

相も変わらずシャロンが破天荒でおもしろい。今回、シャロンはいつもと違う側面(つまりは、淑女らしさと知性……)をかいま見せておりますが、そのギャップがまた楽し。天才に挟まれてやさぐれてしまった貴族のぼんぼんがシャロンに感化されていく過程はおもしろかったかも、しれない。
いつものごとく、ラウールはかっこいいし(ここすごく重要)、ラウール母、執事さん、それに騎士さんたちもいい味を出してきておりますし、続きが楽しみ。
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 『精霊の歌う夜 サンク・ヴェリテの恋人たち

銀の一角獣
片山奈保子/羽原よしかづ(イラスト)・集英社コバルト文庫【bk1別窓版

銀の一角獣・アズファーンの花嫁として見初められたイゼーテは、カルゼイ山脈の銀の森で婚礼の日を待っていた。しかし、アズファーンの妻の座を得て世界を統べようとする女呪術師アナンテはイゼーテから花嫁の証である銀の指輪を奪おうと画策する。

雑誌cobalt8月号(2003年)で短編『風にとき放て』として発表された作品の続編(短編ではイゼーテがアズファーンの花嫁候補になるまで)。感想は、「えーっ!?」の一言。途中までは普通だったんだけど、最後のアレはいろんな意味で反則でしょう。というか、笑うところ?他はきれいにまとまっていましたけど……。
後書きにも書かれていますが、イゼーテの「美しさ」ぶりに意見が分かれるところと思う。ちなみに、私は性格がねじれまくっていますのでだめだった(笑)。あそこまで賞賛されていたら、なんだか嘘っぽい。ボケキャラとかでもなしに、なんか、超越した「いい子」だから。心の中にどろどろしてものを持っていた短編のイゼーテの方が現実味がある(とはいっても、そこら辺のどろどろは短編で昇華されたからこそ今のイゼーテがいるのかも)。
あと、人の名前がややこしくて、誰が誰か途中でわからなくなった(ものの、強行読破。大して支障はなかった)。一冊目にしては登場人物が多いし……。続きも、あるのかな?ありそうだ。
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 『さよなら月の船

手折られた青い百合 歓楽の都
駒崎優/雪舟薫(イラスト)・角川ビーンズ文庫【bk1別窓版

ロンドンの自治地区レーンは、街全体が娼館で成り立っている歓楽の都。そこのトップクラスの「宝石」ショウは、レーンに新しくやってきた青年医師レイと親しくなっていく。ちょうどそのころ、レーンでは怪しい薬が出回り始め、宝石たちにも被害が及びだし……。

駒崎さんの新シリーズ。19世紀の捏造された(笑)エセイギリスで繰り広げられる物語。レーンの設定がおもしろい。登場人物たちも味があって、駒崎さんらしい掛け合いというか何というかを楽しめた。まだまだ黒幕もいることですし、続きがでるのなら是非とも読んでみたいシリーズになりそう。
表紙が微妙、あらすじも微妙、でも駒崎さんの本は読みたいといういわば特攻状態だっだんのですが、特攻成功です。たとえ殿方同士が親密になりすぎる話であっても、これくらいならまだ大丈夫です……、はい。そういうのは絶対いや、認められへん!というわけでもないのならあまり問題ないと思われます。
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 『針は何処に 黄金の拍車

天空の剣
喜多みどり/宮城とおこ(イラスト)・角川ビーンズ文庫【bk1別窓版

突然の酸の海の浸食で崩壊寸前の世界。そして酸の海からわいて出てくる魔物を食い止めるために集められた傭兵たち。そんな傭兵の中の一人のいつでもマイペースな魔法使いダークロアとその相棒で剣士のノクスは、ウィノアと名乗るぶっきらぼうな女剣士の旅に同行することになる。

ビーンズ文庫の新人さんの第1作。すごく楽しめた!いえね、こういうお話を待っていたんですよ(笑)。やはり基本はボーイミーツガールでなくては、ね。いいとこばかりでもないんですけど(時折、説明不足に感じるところありますし。なんでアレはこうなんだ!と思ったこともいくつかあります)、そこら辺は新人さんだし、これからに期待ということで(なんかえらそうやな(汗)……)
崩壊寸前の世界、それに立ち向かう謎の美少女(ただし凶暴)、自称天才魔法使い、寡黙な(というか、しゃべれない)美形剣士……、こういうキーワードになにかひらめくものがあればチャレンジしてみるとよろしいかと。
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暁のアドミラル
楠本ひろみ/きなこひろ(イラスト)・角川ビーンズ文庫【bk1別窓版

海賊ドレークの子として育てられたジュエルは、実は女王エリザベスの産んだたった一人の正当な跡継ぎだった。真実を知らずに育てられたジュエルは、フェリペ二世を暗殺すべくスペインに乗り込んでしまい……。

イギリスのこういう時代のお話に弱いのでついつい手に取ってしまった。この作者さんのお話は、以前『エメラルド・フォレスト』を読んだことがあるのですが……、今回も前と同じでなんとなく煮え切らないうちに終わってしまった感が否めない。淡々としている、というか、なーんかハリがない、というか、クライマックスなのにいまいち燃えない、というか。こりゃ、もう文があうかあわんかの問題かな……。設定とか舞台とかはドンぴしゃで好きなはずなんだけどなぁ。今までになかった粗雑なエリザベス女王というのはおもしろかったし。ヒーローがどうもいまひとつだったいうのも大きな要因かもしれない。
Aug/30/03 ↑TOP
 『エメラルド・フォレスト