2003年10月の本の感想


ジハード2 こぼれゆく者のヤーファ
定金伸治・集英社文庫【bk1別窓版

リチャード率いる十字軍は、サラディンの率いるイスラム軍本体に近づきつつあった。サラディンの危機を救うため、ヴァレリーはいつもの奇抜な作戦をもって十字軍に対抗しようとするが……。

ジハードの2冊目。少し唖然とするような内容になってきたような気が。いきなりロビン・フット出てくるし(私の理想のロビン・フットは衛生アニメ劇場でやっていた「ロビン・フットの大冒険」のロビン……)。個人的には、結構ぶっ飛んでいて面白いんだけど、(レーベル的に)普通の文庫本で、お堅い内容を期待してしまうと肩すかしを食らうと思う。スピーディーな展開で、あれよあれよという間にいろいろ進んでいって面白いのだけど、心の移り変わりが唐突やなぁ、と思ってしまう点がいくらかあってちょいと不満。あと、女性陣の口調がどうも納得いかん!絶対変やと思う(のは、比較対象物がいわゆる少女小説やからやろうね)。

とか文句を言いつつも、続きは気になるしそれなりに気に入っているので続きも読みます。
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 『ジハード 猛き十字のアッカ

業多姫 弐之帖―愛逢月
時海結以/増田恵(イラスト)・富士見ミステリー文庫【bk1別窓版

美駒の里をあとにした鳴と颯音は争いのない理想の地と言われる戸谷之庄を目指した。しかし、たどり着いた戸谷之庄もやはり争いが絶えることはない場所で……。

世界は二人だけ〜、だれも二人の仲はじゃまさせない〜。な感じの業多姫第2巻。期待していたとおりのラブっぷりがすがすがしい。最初の1ページ目からあまりにものラブっぷりにあてられました……。1巻の時よりも超人大集合な話になってきておりますので、「なんかすごい力を持っている人間が、少人数(今回は4〜6人?)で大人数相手に戦う」というのが苦手な方は要注意(個人的に一番超人(?)と感じたのは阿王丸(鳴の愛馬)かな。こいつ本当に馬か?もしかして悪い魔法使いに魔法をかけられた元人間とか言うことはないだろうな……(←あり得ません))。それでもって、このお話はイラストもきれいですね〜。颯音君が色っぽくて素晴らしいです(笑)。
Oct/15/03 ↑TOP
 『業多姫 壱之帖―風待月』』

ブルー・ムーンに口づけを2 休日王子は夢に舞う
一条理希/川添真理子(イラスト)・富士見ミステリー文庫【bk1別窓版

極貧探偵社の立て直しを夢見て日がな貧乏生活を送る桜真子。同居人の蒼月祐作と公園で食料調達をしていた真子は血まみれの王子様を拾ってしまう。ユールと名乗る王子様は、怪盗ノクトルムに命を狙われていると爆弾発言をかましてきて……。

どたばたラブコメと化しているような『怪盗紳士は夜、微笑う』の続編。基本はコメディですからねぇ、その辺を割り切ってしまっているつくりなので素直に笑える(やっぱり、今回も相古さんちのくぅちゃんに笑ってしまいましたよ……)。生きることに精一杯(笑)でそれ以外のことについては鈍感な真子ちゃんがかわいかった……。これは、ユールも一生報われませんなぁ。話の筋は何となく予想できてしまったりするんですが、それはそれで感動できるというか、ベタはベタで大好きなのでその点問題なし。祐作&恭一郎と因縁ありの怪しげな人の影もちらほらと、でだんだん話が大きくなっていきそうで楽しみ。
Oct/13/03 ↑TOP
 『ブルー・ムーンに口づけを 怪盗紳士は夜、微笑う

泣かないでストレイシープ 午後の紅茶と迷子の羊
竹岡葉月/菊池久美子(イラスト)・集英社コバルト文庫【bk1別窓版

第一次世界大戦後のニューヨークで母の突然の死でひとりぼっちになってしまったセリアの前に現れたのは、存在すら知らなかった父方の祖父の使いだという若い執事見習いだった。彼とともに祖父のいるイギリスに渡ったセリアは、祖父の莫大な遺産を受けつぐことになってしまい……。

若い女主人(多少型破り・16歳)を影でそっと見守る若い銀縁眼鏡の有能な執事(25歳)……、ごめんなさい、こういうの大好きです(笑)。もうこれだけでお腹いっぱいでした……。というわけで、竹岡さんの新シリーズ。第一次大戦後のイギリスのカントリーハウスを舞台としたホームドラマ、とのこと。イラストがすごくかわいくて物語にぴったりでこれまた幸せ気分を味わえた。ニューヨーク・ヤンキースをこよなく愛するセリアと、彼女を取り囲む愉快な使用人たちの前に現れた謎の青年(セリアのせいで記憶喪失)。巻き起こる騒動に、ちょっと弱気になりつつ毅然と立ち向かうセリアはかっこよかった。これまた女の子が生き生きと光っている物語。続きも出るとのことなので、今から楽しみ。
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 『フラクタル・チャイルド ここは天秤の国

ジハード1 猛き十字のアッカ
定金伸治・集英社文庫【bk1別窓版

サラディン率いるイスラム軍は、聖地を奪還しようとする十字軍と対峙していた。そんなサラディンの幕下にヴァレリーという謎のヨーロッパ人が加わる。ヴァレリーはサラディンの義妹エルシードの配下としてイスラム軍を勝利に導いていく。

だいぶ前から気になっていたんですが、あんまり見かけないジャンプノベル(これは微妙なレーベルだな……。個人的に)から出ているものを、大幅に加筆修正を加えて文庫から出し直すというので、いい機会だと思い手に取ってみることに。感じとしては、何となく田中芳樹で(銀英伝というかアル戦というか)、田中芳樹に似てるなぁ、と思いながら読んでいたら主人公が「やる気のないナルサス」に見えてしまった(注:実際にはヴァレリーとナルサスはあんまり、いえ、ほとんど似てません)。ノリは少年向けレーベルからやってきたのも頷ける熱い戦い。結構燃えますね。こういうの大好きだ。いろいろとなんか都合よすぎやしませんか、とかエルシードのあれやこれは反則ではなかろうか、とかふつふつと疑問もわいてきたんですけど、それらも(物語をおもしろくするスパイスと思えば)どちらかといえばあまり気にならなく、続きも読もう、と思っております。
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鏡のお城のミミ 幸せの村へようこそ
倉世春/水谷悠珠(イラスト)・集英社コバルト文庫【bk1別窓版

エリックとともに故郷の村に無事戻ってくることが出来たミミ。当初、村人たちはエリックを歓迎していたもののとある”助言”のおかげでエリックに対して急によそよそしい態度を取り始める。そして、ミミは新しいメイドを捜しているという森のお屋敷につとめることとなって……。

マイペースヒロイン・ミミと何となくいつも報われないヒーロー・エリックののほほんとしつつ実はシリアス物語第3巻。村人たちの純朴さがおもしろすぎた。やっぱり、「いい人」たちは他人をハブにすることなんて出来ませんよね(笑)。思わぬところでエリックの秘密第二弾や過去があかされたりした上に、次への気になる幕引きでお話が終わってしまって……、続きが気になるって……。女ったらしらしいじじぃからミミを守ることが出来るのか、エリック君!ということで次が楽しみ。
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 『鏡のお城のミミ 山賊たちにご用心!

そのとき翼は舞い降りた
高殿円/小田切ほたる(イラスト)・角川ビーンズ文庫【bk1別窓版

何よりもお金が大好きでお金のにおいをかぎ取ることが出来るという特技を持つ少女フランチェスカは、いつかガザーラで一山あてることを夢見て小金を稼いでいた。しかし、父親の作った借金の形に売り飛ばされる途中、偶然にも悪神ゼフリートの籠手を継承してしまい、親しい人から忘れ去られてしまうという呪いを受けてしまうことになり……。

楽しみにしていた高殿さんの新作。遠征王の時代より百年さかのぼり、時のパルメニアの王は隻眼王ミルドレッド。遠征王などで名前を目にしたり、出演したりした人が出てくるんですが……、こぞってイメージが崩れてしまうこと間違いなし。
この物語を一言で言い表してしまうと、ヒロインが最強(フランに突っ込まれるのはある意味命がけです)。幸か不幸か手に入れてしまった<籠手>で最強の鉄腕を手に入れてしまったフラン、そしてフランの前に現れる謎の美形というおいしい設定(笑)。ギャグとシリアスの絶妙な配分具合がやはりよろしいですなぁ。コック軍団の前身かっ?と思ってしまうような熱い傭兵団・絶対無敵団が今度はヒロインの手下ですよ……、これも個人的にかなりおいしかった(笑)。謎が謎を呼ぶ状態で、つらい目に遭っているはずなのにそんなことを微塵とも感じさせないフランの前向きな思考回路が好印象。これまた続き切望なくらい気に入ったので、地道に布教するか……。
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 『運命よ、その血杯を仰げ 遠征王と隻腕の銀騎士

お嬢様とは仮の姿!
喬林知/松本テマリ(イラスト)・角川ビーンズ文庫【bk1別窓版

グレイブス家のご令嬢エイプリルはお嬢様とは別の裏の顔があった。それは、祖母から受け継いだトレージャーハンター稼業。祖母の守り続けた謎の箱「鏡の水底」をドイツ軍から取り戻すという依頼を受け、エイプリルは相棒とともに早速実行に移ることにするが、「箱」の秘密を知っているらしいドイツ人青年将校と思わぬ共同戦線をはることになり……。

『まるマ』シリーズの番外編。たしかにこれ単体でも読めるとは思うけど、まるマ読んでないと意味不明な点がいっぱいだろうなぁ。でもって、本を手に取ったときに一気に心拍数が上昇するバカ者が約一名ここに。だって、表紙に軍服を着た次男ですよっ!(注:次男に似ているのであって、次男本人ではありません)
気を取り直して、内容。エイプリルがかっこよかった。リチャード、もといリヒャルトもかっこよかった。オトコマエなヒロインは読んでいて爽快なので好き。まるマ本編の謎が一部あかされていますが、それと同じくらい謎も増えたかと。次男好きにはいろいろとたまらない一冊。
おもしろかったので個人的には満足なんですが、願わくばエイプリルと将校さんのらぶらぶモードがもっと見てみたかったなぁ……。
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 『地にはマのつく星が降る!

スカーレット・クロス 混ざりものの月
瑞山いつき/橘水樹・桜林子(イラスト)・角川ビーンズ文庫【bk1別窓版

吸血鬼との<混ざりもの>である少女ツキシロは、瀕死のところを神父のギブに助けられた。しかし、そのおかげでツキシロはギブの『聖な下僕』となってしまう。腕は一流だが女ったらしで意地悪なギブに振り回されるツキシロは、誰かに狙われているらしく……。。

ビーンズ文庫新人さん第二弾。今度は吸血鬼もの〜。折り込みチラシによると、ウリはエロティックな主従関係とありますが……、うーん、うーん、わざわざ売り込むほどのエロではなかったような気がしますなぁ……。別に普通やん。きれいにまとまっておりますし、曰くありげな伏線も最期に見事に解消されていて、娯楽小説としては楽しめるレベルかと。ただ、話がこぢんまりしておりますので、もうちょっとその辺が広がって大きな事件とかになってくれた方が個人的には好みかも。
Oct/03/03 ↑TOP