2006年12月の本の感想



エパタイ・ユカラ〜愚者の恋〜

高丘しずる/輝竜司(イラスト)B's-LOG文庫文庫bk1amazon

東西に分裂した近未来の日本。西倭国総督府にある寄宿制の女学校に通っている黎良は医師を目指し、日々勉学に励んでいた。ある日、街で出会った名も知らない青年にほのかな思いを寄せるようになった黎良だが、テロリストの破壊活動に巻き込まれてしまい……

みりおんぐらむさんの感想に釣られました。あげられているキーワードがどれもう好物です。そして、釣られて正解。つっこみ所は多々あれど、それ以上に魅力的なストーリー展開に思わず引き込まれました。細かいところが気になる人にはお勧めできませんが、個人的にはおもしろかったですー。
読んでいるときに思わずBASARAや(いや、全然違うし)、北斗の拳(だから方向性が全く……)を思い出してしまったのですが、そんな「んなわけあるかいな」という近未来の日本が舞台。ここで躓いたらたぶん先に進めませんが、これを乗り越えると後はもう楽しむのみです。
元気で前向きなヒロインは好印象だし、「初めての恋」の描写が非常に丁寧ですばらしいです。彼女の脇を固める友人達もこれまた素敵。口では何のかんのいいながらも本当に黎良を思っている様子がよく伝わってきます。そして、かなりハイスピードで展開していく物語が読む手を止めさせません。1冊目でここまでやっていいのですか、というくらい急展開。時折はさまれる黎良の関係者が語る述懐シーンがこれからの展開が辛そうなことを示唆していてこれまた続きが気になるわけで……。あのラストで続きが出なかったら詐欺だと思います。
Dec/27/2006 ↑TOP
 


カントリー・ハウスは恋のドレスで ヴィクトリアン・ローズ・テーラー

青木祐子/あき(イラスト)集英社コバルト文庫bk1amazon

モアティエ公爵の依頼で彼の愛娘・アップルのために住み込みでドレスを作ることになったクリスは、パメラと共に公爵のカントリー・ハウスにやってきた。ドレスは不要と採寸を拒むアップルに手を焼くクリス。しかも、公爵の屋敷にはクリスが恋心を自覚してしまった相手のシャーロックも滞在していた。

今回のお話も面白かったです。いつものお客様とかなり傾向が違うアップルはとてもしっかりしたお嬢さんで大変好感が持てましたし、なによりシャーロックの従妹・フリルちゃんがかわいくて。彼女だけは敵に回すのはやめておいた方がいいと少しだけ思います。小さくても一人前のレディですから。
クリスを選ぶことで起こりうる未来をモアティエ公に見たシャーロックのクリスへの思いや、シャーロックを意識しすぎて調子を崩すクリスに思わずにやりとしてしまいます。登場人物の描写もさることながら、ドレスの描写もとても丁寧なので読んでいてとても自然に物語に入っていけるので読んでいてとても楽しいです。しかし、今回姿を現したアイリスには本気で笑ってしまいました。彼女の「動機と目的」はよく分かるのだけど、でも、やっぱり何をしたいのかがよく分からなくて……。や、やっぱり闇のドレスはまだ笑える……。アイリスや闇のドレスについてもう少し詳しく語られたら笑わなくなれるんだろうか。
Dec/20/2006 ↑TOP
 『恋のドレスと薔薇のデビュタント ヴィクトリアン・ローズ・テーラー


抗いし者たちの系譜 覇者の魔剣

三浦良/KIRIN(イラスト)富士見ファンタジア文庫bk1amazon

現魔王サラと同じ力を持った剣、つまり魔力を吸収する魔剣が発見される。魔剣を餌に謀臣達をふるいにかけようというサラの思惑と、謀臣達との新たなる駆け引きが始まる。一方、魔剣に興味を持った前魔王は、魔剣に釣られ反乱を起こしたチョウリュウの討伐に自ら名乗りを上げた。

魔王となった元勇者サラと、サラに倒された元魔王ラジャス、謀略・策略の駆け引きがてんこ盛りのシリーズ第三巻です。個人的には策略・奸計は二の次で、サラの皇帝としての自制心と押さえた恋心、というあたりが非常に好みなのですが……、足りないです。ラブが足りません。これは非常に残念です。十重二十重に張り巡らされた策略というのは読み応えがあるんですけど、やっぱりラブが(←そろそろしつこい)。
お話も魔剣編の導入ということでなにやら前半はイマイチ乗り切れるモノを感じられませんでした。ラジャスさまが名乗りを上げられたあたりから一気に物語が加速して面白かったのですが。魔剣に振り回される人間達、はたしてサラはこの問題をどう利用するのでしょうか?
Dec/23/2006 ↑TOP
 『抗いし者たちの系譜 虚構の勇者


アルスラーン戦記12 暗黒神殿

田中芳樹/丹野忍(イラスト)光文社カッパノベルズbk1amazon

ザッハークの眷属の攻撃を受けたペシャワール。迎え撃つクバートらは魔物を率いるインテルシュと凄惨な闘いを繰り広げる。一方、ギーヴは行方不明になったレイラがタハミーネの元にいるという情報をつかみ、事の真偽を確かめることにする。

奇跡の二年連続刊行・アルスラーン12巻。ペシャワールでは絶対誰か死ぬ、とある種の恐れを抱きながら読んでおりましたが、案外さらりと決着がつき拍子抜け。いやしかし、個人的には「こいつらさえ無事ならば……」という希望の光がひとつ潰えたので心の涙で前が曇りました。
さて、やっぱり安定して面白いのでちょっと憎らしいです。政変であれよあれよという間にミスルを掌握したヒメルス、ザッハーク一味の行動、タハミーネの実子問題はどこで決着するのか、エステル一向は果たして無事にアルスラーンと再会できるのかと気になる要素はたくさんです。パリザードの持ってる腕輪をエステルにあげてエステルがアルスラーンのお嫁さんでいいじゃない!(こういう展開大好き)今回彼女の身にいきなり降りかかった事故が非常に不吉です。エステルを幸せにしてあげて下さい……。
しかし、ここまで人死にが少ないとこれから先が恐ろしいことになりそうです。どの人にも平等に死兆星が輝いているとしか思えない……。無事だと思っていたアルスラーンとエラムにまで輝きはじめたように思いました。無事なのはアルフリードとギーヴくらい?そして今回イスファーンもとうとう危ないな、と。表紙にきたし、作者のコメントもあるし、何よりよく転ぶ娘アイーシャという存在が……。
Dec/16/2006 ↑TOP
 『アルスラーン戦記11 魔軍襲来


恋のドレスと薔薇のデビュタント ヴィクトリアン・ローズ・テーラー

青木祐子/あき(イラスト)集英社コバルト文庫bk1amazon

年の離れた実業家との結婚を控えた内気な男爵令嬢ファニーのドレスを作成することになったクリス。結婚に乗り気ではないファニーは結婚を前に名も知らない初恋の相手に思いを伝えたいと一念発起するが……。

シリーズ3冊目。登場人物に一番好感が持てたせいでしょうか、個人的には一番面白かったと感じました。
今回のゲストキャラは内気な公爵令嬢と、嫌な感じの実業家、そしてシャーロックの友人の青年弁護士で、この青年弁護士が気持ちのいい好青年でした。この時代特有の女性の生きにくさに押しつぶされながらも、最後は勇気を振り絞ったファニーのがんばりも読んでいてとても好感の持てるものでした。今回は闇のドレスにあんまり笑わなかったというのもポイントが高かったのかもしれません(笑)。
そして、いよいよこの巻で観念したクリス。次回以降、シャーロックがどう動くかが大きな鍵になりそうです。
Dec/16/2006 ↑TOP
 『恋のドレスは開幕のベルを鳴らして ヴィクトリアン・ローズ・テーラー


恋のドレスは開幕のベルを鳴らして ヴィクトリアン・ローズ・テーラー

青木祐子/あき(イラスト)集英社コバルト文庫bk1amazon

ロンドンでも評判の仕立屋「薔薇色」の主人クリスは再起をかける舞台女優マーガレット・ベルの舞台用の衣装の制作を引き受ける。しかし、クリスはこのマーガレットの舞台に人の心の闇を映し出す「闇のドレス」の存在を感じ取り……。

「恋のドレス」の第2巻。闇のドレスが登場するとどうしても笑えてしまい手を出さずにここまで来ましたが、いやしかし。面白いですね。なんといってもドレスに並々ならぬ情熱を傾け、それに反して自分の心を押し殺すクリスのこの相反する感情がもどかしくて。そしてその彼女の気持ちをかき乱す存在、公爵令息のシャーロック。もう明らかに絶望的なほどの身分差ですがこれを越えるのがコバルト文庫です(書いてて意味不明)
今回のマーガレットとその周辺の出来事は、個人的にあんまり好きになれなかったのですが(そして闇のドレスにやっぱり笑った)、それ以上にリルちゃんがかわいいしクリスとシャーロックがよかったので問題なし。続きもどんどん読んで今月の新刊に間に合わせたいと思います。
Dec/15/2006 ↑TOP
 『恋のドレスとつぼみの淑女 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー


月色光珠 天馬は闇夜を翔る

岡篠名桜/風都ノリ(イラスト)集英社コバルト文庫bk1amazon

思いは告げられぬものの、魏有とともに穏やかな日々を過ごしていた琳琅であったが、何者かに宝物である夜明珠を盗まれてしまう。とあるところで知り合った伶とともに夜明珠の行方を追うことにする琳琅であるが……

第三巻は謎に包まれた茶館の用心棒・李尚の謎が明かされるお話でした。既刊分に比べたら琳琅と魏有のラブ度は低いんですけど、それでも十分に端から見ればラブいです。気付け、二人とも。腹黒街道まっしぐらの魏有さんがちょっと面白かったり……。腹黒いと言えば諸悪の根元・安潜もなんだかいい味出してきてます。今回の弟は大して目立っていなかったのでこちらは残念。これからもこの腹黒トリオも是非とも頑張って頂きたいです。
なんか物足りないなーと思いつつも読んでしまうのは、このじれったさというか実際両思いのくせにコノヤロウというこの二人の微妙な関係が読んでいて面白いからでしょうね。
Dec/10/2006 ↑TOP
 『月色光珠 暁の野に君を想う


銀の騎士 金の狼 新たなる神話へ

榎田尤利/北畠あけ乃(イラスト)講談社X文庫WHbk1amazon

フェンリルとサラを中心にレジスタンス”テラ・メリタ”はかつてない盛り上がりを見せていた。ユージンの計画する”ドールハウス”を解放し、その様子をシティのTV回線を乗っ取り放映するという計画を立てたテラ・メリタは二手に分かれ、作戦の準備に取りかかるが……

フェンリルとサラの物語の最終章の幕開けです。大きな組織になったが故のトラブル、ユージンの転身、そしてフェンリルとサラの決断と最終決戦に向けての布陣が着々と進められていきました。それにしても、アショクはいい奴だな……。沈みがちな物語の中でアショクのあの前向きさと思考回路はこの物語の清涼剤でもあります。
フェンリルにはタウバ、そしてサラにはエリアスとルアンにディン、信じられる仲間がいることがそれぞれの救いとなっているのだと感じました。エリアスにはサラがいたらそれで十分でしょうが(笑)。
そして、今回一番びっくりしたのはこの物語でフェンリルが御歳三十を超えていたということなのですが(←妙なところでびっくりしすぎ)、それ以上の驚きはこの次でラストだということ。たしかに、最後に向けての話の準備は終わった感もありますが、それにしてもあっさりとラストに向かうのですね……
Dec/07/2006 ↑TOP
 『生まれいずる者よ ―金の髪のフェンリル―


光炎のウィザード 再会は危機一髪

喜多みどり/宮城とおこ(イラスト)角川ビーンズ文庫bk1amazon

調査のために指導教官ヤムセと他の研究室のメンバーと共にとある土地を訪れたリティーヤ。調査以外にも某舞踏会に出席することになったリティーヤだが、ヤムセの昔馴染みに助けられたり生き別れの兄を見かけたり妙な武闘会に参加させられたりとトラブル続きで……

コメディなのかシリアスなのかイマイチよくわからない光炎のウィザードの第2巻。私はこのごちゃまぜ感を楽しいと感じることができましたので、今回も面白かったです。……、ポロリもあるよ、には一瞬退きましたが……
研究室の他メンバーの登場や、やっぱりいろいろ暗躍しているユローナさんの動きが気になります。研究室メンバー・バドさんの真意も気になるところ。
そして少し明かされたヤムセの謎と、生き別れになったリティーヤの家族関係もこれまた気になるところ。黙っていれば「美少女・美男」の師匠と弟子(但し二人ともかなり変)のこの何とも絶妙なコンビの今後が楽しみです。
Dec/06/2006 ↑TOP
 『光炎のウィザード はじまりは威風堂々


銃姫8 No Other Way to Live

高殿円/エナミカツミ(イラスト)MF文庫Jbk1amazon

スラファトに追いつめられ、谷への撤退をはじめた流星軍。撤退時、セドリックに正体を見られたエルにはセドリックの言葉は届かず、姿をくらます。一方、アンブローシアはセドリックのいる流星軍の本体と合流するために、暁帝国軍と共に灰海を進んでいた。

銃姫のクライマックス直前の一冊。今回はセドリックとエルウィングの姉弟関係の真実、そしてスラファト対流星軍の息もつかせぬ対決と見所がたくさんでした。特にスラファトvs流星軍、言い換えればチャンドラースとジュディットの相手の裏の裏をかく攻防戦がとにかくすごくて。昔かわした何気ない一言が作戦の全体像を決めるといった「因縁の対決」といったところ非常にドラマチック。この勝負にどのような決着がつくのか非常に気になります。
あと1冊とのことですが、それたぶん無理やから、と思うくらい決着のついていないことがたくさんありすぎます。それと、当初はラスボスっぽかったけど最近とんと影の薄いオリヴァント……。何はともあれ、最終巻らしい次回が楽しみです。
Dec/01/2006 ↑TOP
 『銃姫7 No More Rain


銀盤カレイドスコープ vol.8/vol.9

海原零/鈴平ヒロ(イラスト)集英社スーパーダッシュ文庫bk1amazon

女帝リアに挑戦状をたたきつけたタズサはマイヤの元で限界を超えるトレーニングの日々を過ごしていた。そして、迎えたバンクーバー五輪。リアの元コーチであるマイヤから授けられた秘策を手に、打倒リアのためにタズサはショートプログラムに臨む。

銀盤カレイドスコープの最終巻、とにもかくにも圧巻の一言に尽きるフィナーレでした。BIG4をはじめとするトップスケーター達の演技。スケートにあんまり詳しくない私でも思わず手に汗握るスケーティングシーン(技の名前等よくわからないので、視覚化はまず無理ですがそれでも十分)は毎度ながらにすばらしいです。そして、リアに立ち向かうタズサの心情がこれまたいつもより濃度の濃い描写で息もつかせません。
8巻のラストでああなって、分厚い9巻がまだ後に控えているけどどうなるの?と2冊を連続で読まなければ非常に心臓に悪い展開になっております。そして、9巻ではまさかこう来るとはっとこれまた驚きの展開。9巻では読めば読むほどタズサの心情に引き込まれてかなり凹みましたが(←一応隠しておきます)、でも最後まで読むといつもながらの爽快感。とにもかくにも、とにかく熱いフィギュアスケートの物語、とてもすばらしい作品でした。
しかし、このラストの2冊は精神的に余裕にある時じゃないと私は読めないなぁ。最後の2冊が一番内容が濃いとは思うのですが、個人的にはピートのいた最初の2冊が一番好きかなー。ピートは偉大だった……。
Dec/02/2006 ↑TOP
 『銀盤カレイドスコープvol.7 リリカル・プログラム
↑あ、予想はずれてる