2007年3月の本の感想



翼は碧空を翔けて 3

三浦真奈美/椋本夏夜(イラスト)C-Novels Fantasiabk1amazon

終戦や父王の死などを乗り越えたアンジェラに王女としての日常が戻ってきたが、心の中はなかなか晴れなかった。そんな彼女を見かね、兄フランツから外交のためのエグバード留学を提案されたアンジェラ。ロードリンゲンに産業を誘致するという目的を果たすため、エグバードの社交界で積極的に活動するアンジェラは、飛行船の開発をあきらめていないセシルと再会する。

シリーズ最終巻のこの一冊、2冊目のアンジェラとセシルの直接の絡みゼロという鬱憤をはらすがごとくのラブっぷりに大満足です。「世紀の」ラブロマンスかといえばちょっと物足りないかもしれませんが、王女と外国の(爵位を持たない)青年実業家というこの組み合わせだけで非常にロマンチックですねぇ。顔を合わせれば言い争いなので最後の方までロマンのかけらがあんまりないお二人でしたが。とにかく、最終章なんてにやけっぱなしで読んでました。行動力に溢れるアンジェラがこの物語最強と思っていたんですが、最強なのはフランツ兄上……。
最初はあんなに活躍していたのに、最後はめっきり脇役になっちゃったランディ君やなんやらといろいろと残念だなーと思ってしまったしたので、五冊くらいじっくりかけてじっくり描いて頂いてもよかったのにと思わずにはいられませんでした。しかし、全三冊とおして非常に私好みのストライクゾーンにドンぴしゃの直球ストレート、ハッピーエンドな物語で大変楽しむことができました。個人的にここ一年で読んだ本の中でもかなり上位のお勧め作品です。次の新作にも期待ですが……、今回のようにまた長期のブランクがあるのは勘弁です(笑)。
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 『翼は碧空を翔けて2


リリアとトレイズV 私の王子様(上)

時雨沢恵一/黒星紅白(イラスト)電撃文庫bk1amazon

ベゼル王家への婿入り話が本格化しているトレイズは、近いうちにその答えを出す必要があった。そんな中、ベゼルの次期王女マティルダのイクス訪問の案内役を務めることになったトレイズは煮え切らない態度を取るばかりであった。一方、リリアは母アリソンと共に春休を利用して北海地方へ列車旅行をすることになる。トラブルが重なりなぜかトレイズたちの乗っている列車に相乗りすることになったリリアとアリソンだが……

このシリーズになってから今まで感想書いてませんけどちゃんと読んでてしかも大好きです(感想書いてないくせに)。ヘタレ王子がいつヘタレを返上するかと楽しみで楽しみで……、シリーズもクライマックスと言うことで、これは下巻に期待するしかありませんね。出てくるたびにリリアに締めあげられているトレイズが面白いんですけど、もうちょっと頑張っていただかないと。”英雄さん”の血を引いているとはとても思えません(笑)。
毎度ながらの謎に包まれたストーリー展開でさすがです。名前しか出ていない<囚人四二番>が不気味で、誰が一体こいつなんだっ!とスリル満点です。トレイズが男を見せるか、犯人は誰だ、トラヴァス少佐とリリアは果たしてと完結編がいろいろ楽しみでなりません。
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陰陽ノ都 巻の五

渡瀬草一郎/酒乃渉(イラスト)電撃文庫bk1amazon

晴明の体を狙う鶴楽斎により、晴明の妻梨花と息子の吉昌、そして晴明邸に滞在していた時継が攫われた。時継たちを救うために愛宕の天狗に助力を求めた保胤と吉平は、天狗の不思議の力もこの事件に関わっていることを知る。

久しぶりの陰陽ノ都(とはいっても、私は出てだいぶしてから一気読みだったんですが)、物語のもつ雰囲気は変わらずでとても楽しめました。いわゆる「悪役」というも普通の「悪役」とは違い、「悪」じゃないんですよね(何が言いたいかよくわからない説明です)。今回の物語では”鶴楽斎”と天狗の”猛丸”がいわゆる悪役ポジションですが、二人とも妙に味のあるキャラクターでした。
保胤の甲斐性なしのところにつっこみたくなったり、時継のまっすぐさに「先生っ」と梨花さんと一緒に拳を握りしめたくなったり、吉平と貴年のほほえましやりとりに思わずニヤリとしたり(吉平君の積極さの半分でも先生にあれば……)物語の中の穏やかな空気は同じで、ほっとします。
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 『陰陽ノ京 巻の四


ロイデン・ローダス・オラトリオ 女神の恋人

桃井あん/桑原祐子(イラスト)集英社コバルト文庫bk1amazon

ロイデンの王女ミーシャは国の唯一の王位継承者。寿命の迫っている女王のあとを継ぐには結婚する必要があるが、ミーシャはまだ結婚に不安を覚える十六歳の少女でもあった。「聖夫」と呼ばれる男性との婚儀をすぐそこに控えたある日、王宮で謎の不審者と遭遇したミーシャは彼の王宮からの脱出を手助けする。

伝説が国の根幹をなすインド風の王国を舞台に、世継ぎの王女の結婚と結婚をめぐる国内(と国外)のちょっとした陰謀を描いた作品。結婚式の当日に出会った怪しい人は、実は運命の恋人〜等という非常においしい展開に仕上がっておりまして……、こういう展開大好きです。
「聖夫」がただの当て馬じゃなくて良かったです(←あらすじ読んだときにただの当て馬だと思いこんでいた人)。各人物の背景や女王の思惑、そしてミーシャの恋の行方などいろいろ気になる要素はたくさんでしたが、一番の驚きの展開はやっぱり侍女殿かなぁ。かなり、無理ないかこれ?と思わなくもないのですが。
個人的には楽しめたのですが、デビュー作同様ちょっとパンチが足りない感のある作品でした。うーん、いろいろとおいしい要素は盛りだくさんなのですが。やはり今後に期待でしょうかね。
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神語りの玉座

薙野ゆいら/ひびき玲音(イラスト)角川ビーンズ文庫bk1amazon

十年前、東の大国ミツクガから突如として宣戦布告をされたセレティス王国はなんとか国を守りきったものの目に見えて国力は衰退していた。そして、そんな折にミツクガ提示された講和条件は、世継ぎの王子をミツクガに差し出せというもの。セレティスの王子セフィオはこの不平等な講和条件を破談にするため、エスウィンガルドの王子ジェラルドの元に助力を求める旅に出ることを決意する。

ビーンズ文庫新人さん、本年度の4人目。こちらは国を背負う二人の少年の友情物語でした。神様やら国々やらオリジナルな世界が繰り広げられているのは非常に好感が持てる反面、結構読みづらかったです。作者さんオリジナルの造語がてんこ盛りですが、そこら辺は右から左に抜けていく感じ……。もうちょっと、こなれてこられたらもっと読みやすくはなると思うのですがここらへんは今後に期待といったところでしょうかねぇ(えらそうですいません)。
オーソドックスといえばオーソドックスですが、昔の誓いから派生した少年たちの熱い友情を軸に繰り広げられていく物語の展開が好印象。女性陣の登場が(たぶん)ゼロというのは残念なものもありますが、だからといってBLの要素は皆無なんで苦手な人でも大丈夫かなー、今のところ(次以降どう転ぶかは知りません)。物語はひとまずの決着を迎えましたが、根本的な解決は何一つとしてされていないので続きもたぶんあるでしょう。

ずっと前のザ・ビーンズをひっくり返してみたところ、受賞作品は王子じゃなくてお姫様だったのでそっちの方が好みなのにっ!と一瞬思いましたが、これはこれでありかな、と思えました。いやしかし女の子の方が(以下、エンドレス)。
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身代わり伯爵の冒険

清家未森/ねぎしきょうこ(イラスト)角川ビーンズ文庫bk1amazon

パン屋の看板娘ミレーユは、日々店の売り上げアップ計画に心血を注ぐごく普通の少女だった。しかし、隣国に養子に出された双子の兄フレッドが駆け落ち&失踪してしまったために兄の身代わりとして伯爵になりすますことになる。兄の副官というリヒャルトと共に王宮に乗り込んだミレーユだが……。

ビーンズ文庫の新人さん、これぞ王道っっっ!といった非常におもしろい物語でした。男装モノの醍醐味が各所にちりばめられ、もう大満足です。王道&ベタなお話が大好きなので非常に楽しむことができました。
腹をくくったからにはやってやる、という意気込みのミレーユは読んでいて爽快で、天然タラシのリヒャルトと(思わず)ときめいてしまうミレーユのやりとりがツボ。今回の諸悪の根元であるフレッドの変人振りと父親の娘の溺愛ぶりがこれまたツボ。そして、面白すぎるでしょうというテンション高めな他の登場人物にも思わず大笑いです。
ミレーユに降りかかる災難の数々が読む手を止めさせず、このテンポの良さが良いですねぇ。何かを考えさせられるような類の物語ではありませんが、少女小説的王道男装モノのおいしいところがぎゅっと詰まった作品。お話はきれいに終わっているので続きはないとは思うのですが(さすがにこれ以上の男装はきついかな〜?)、とにもかくにも次の作品が楽しみです。
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伯爵と妖精 ロンドン橋に星は灯る

谷瑞恵/高星麻子(イラスト)集英社コバルト文庫bk1amazon

ケルピーに連れられスコットランドに戻ったリディアは、ケルピーの魔法でエドガーとの最初の事件以降の記憶を失ってしまう。その頃、ロンドンのイーストエンドでは原因不明の病が流行はじめ、テムズ川に浮かぶ「箱船」と呼ばれる奇妙な船に乗れば助かるという噂が流れはじめる。この事件にプリンスが関係していると確信したエドガーは、レイヴンと共に箱船に乗り込む。

いつの間にかシリーズ10冊目のシリーズ、物語もちょうど何かの区切りを迎えたような展開でした。ようやくプリンスとの直接対決を迎えたエドガー、第一戦目は意外な結末での決着がつきました。この決着の付け方が今後エドガーにどんな影響を与えるのかがかなり気になる所。次巻以降、いつも以上にヘタレる悩むエドガーが目に浮かんでしまいます……。
いつもながらの主役二人のやりとりに、いつも通りむふふと変な笑いをかみ殺しておりましたが(端から見ると変な人なので外で読めない)、今回は主役の二人は言うに及ばす、周りの皆さまのあれやこれやにこれまたむふふです。レイヴンも教授もケルピーもロタ(いつの間にかしっかりと準レギュラーの地位を固めております)もポールもみんな素敵におもしろかったです。
今回は控えめだったアーミンの動きをはじめとして、次回以降のプリンス一味との攻防、そしてもちろん主役の二人の関係も楽しみです。
MAR/04/2007 ↑TOP
 『伯爵と妖精 女神に捧ぐ鎮魂歌